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妊娠後期の超音波検査でわかる心配ごと その1

堀口貞夫:幸せなお産

「羊水が減少している」などの妊娠後期の超音波検査でわかる心配ごとについて、お話したいと思います。はたしてどれだけ心配する必要があるのでしょうか?

1:胎児の大きさ・発育の状態

計測された体重には誤差がある

超音波検査で計測できる「頭の大きさ」「腹部の大きさ」「大腿骨の長さ」を使って、胎児の体重の推定値を計算します。±(プラスマイナス)399gmぐらいの誤差が出る可能性があります。妊娠中の超音波検査で、「2699gmくらいで小さく生まれるかも知れない」と言われたのに、生まれてみたら2915gmということがあるのはそのためです。

同時に満期産(妊娠37週~41週)で生まれた新生児の体重は2599~3899gmですから、実際にも、1399gmのバラツキがあるわけです。

さて、このように胎児の推定体重を計算できるようになって、例えば妊娠31週に、胎児の大きさは母体のお腹の大きさではなく、1432gmのように数字で計算されます。正確な推定体重に見えますが、これ自体、先ほど書いたように±(プラスマイナス)399gmの誤差があるのです(ということは、1132gmかも知れないし、1732gmかも知れないわけです)。その上、妊娠31週の胎児の体重の平均値は、およそ1619gmとされ、1259~2199gmは正常範囲と考えられています。

つまり胎児が小さいとか、胎児発育遅延とは、簡単には診断出来ないことなのです。

胎児の状態を慎重に見守る必要も

一方では、妊娠週数に比べて胎児の体重が小さい時には、胎児の健康状態を慎重に見守る必要があることも確かです。陣痛が始まってからも、より注意が必要です。

それでは、胎児を心配のない大きさに発育を速める(促進する)ことができるのでしょうか?残念ながら確実な方法はありません。試みられている方法はありますが…。横臥して、子宮の血流量を多くするという、害はないけど効果があるかどうかわからない方法ぐらいです。

検査をやるなら、納得いく説明が必要

「そんなにいい加減な推定体重なら計算しない方が良い」。そうかもしれません。しかし大き目の子か、小さめな子かもわからないのも困るのです。 「それなら医者の頭の中にしまっておけ」も、もっともな言い分ですが、検査をした結果を患者さんに言わないのも、不安をかき立てる原因になります。

結局、「検査をする以上は、(前述してきたような)説明をするべきである」ということになります。これが患者さんの立場にたった診療だと、私は思います。

私の少ない経験と外国で診療を受けた方々の話から総合すると、1時間に3~4人の診察をするようにすれば、「胎児の大きさ・発育の状態」の問題に限らず、ベビカム相談室に寄せられるような、妊婦さんが主治医に聞けずに心配で聞いてくるほとんどの相談は、診療の場で解決されてしまうように思います。現実には1時間に10~15人の診察をしています。この現状の中で、患者さんが納得できる診療をしなければならないわけですが…。

発育の遅れがあったらどうするかは、次の機会にお話します。

2:羊水の量

あくまで羊水量の変化が測定できます

かつては羊水の量を測ることは、お産の時でも難しいことでした。

普通は子宮口が19cmくらい開いた時に、破水すると言われています。いつ起こるかわからない破水の時から、生まれるまでの数時間の間に流れ出る羊水の量を測り、子どもが生まれるのと同時にザッと流れ出る羊水を残らず受け止めることは、至難の技です。

超音波検査で、これを推定できるようにした研究者がいました。羊水指数(1987年)と羊水ポケット(1981年)の二つの方法です。どちらも羊水が多いか少ないかと、羊水量の変化を推測するための方法です。羊水量が何mlと測れるわけではありません。羊水過多や羊水過少の可能性があるかどうかを示すものです。

羊水が少ない時の問題とは?

羊水の量が問題になるのは、羊水が少ない時は、「胎児の尿量が少ない、胎盤機能が低下している、肺の発育が悪いなどの可能性がある。また分娩の時に臍帯が圧迫される可能性がある」などが考えられるからです。ただし基準値(羊水ポケットで2、羊水指数で5~7)以下でも、このような異常がある可能性はさほど高くありません。

羊水過少であるために、臍帯の圧迫が起こっているかどうかは、分娩監視装置で発見できます。そして心拍曲線の変化から、胎児を早く産ませたほうが良いかどうかは、判断が可能です。羊水の量の測定は、分娩監視装置を連続的につけたほうが良いかどうかの判断に役立つぐらいです。

1~2回の検査では、決められない

また羊水が減ってきた場合には、胎児自身、あるいは胎児の環境が悪くなりつつあることが考えられます。しかしこれとても、羊水は常に作られ、吸収され、その量も変化する可能性のあるものですから、一~二回の検査で方針を決定できるものではありません。

このように、「1:胎児の大きさ・発育の状態」でもお話したとおり、羊水量の多い少ないをどう考えるかについては、医師から患者さんへの十分な説明が必要になります。患者を納得させる十分な説明をすることが出来ないならば、医師はこの検査をやるべきではない、のではないでしょうか?

羊水の量に異常があったらどうするか、これもまた次の機会にします。 結局どちらの検査も、「正常範囲をはずれた場合には、ほか検査法を駆使しながら注意深く経過をみる」ということになります。

(2000.12)

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