予防接種の避妊期間中の妊活について
妊活・妊娠前の相談
Q4378:予防接種の避妊期間中の妊活について
7月4日に水痘とおたふくの予防接種を受けました。
予防接種後は2か月の避妊期間を置かなくてはならないと言われますが、例えば9月1日ごろに性交をした場合でも、影響してしまうのでしょうか。
サイトによって、避妊期間を「約2か月」としているところや、はっきり「2か月」としているところもあり、悩んでいます。
最終月経は8月16日で、35日周期です。
よろしくお願いいたします。
2019-08-29 11:43

まず、ご質問の内容ですが、予防接種が7月4日、最終月経8月16日で35日型周期の場合の排卵時期は9月7日前後と推測され、9月1日の性交渉での懐胎(受精)時期は9月7日以降と予測されます。従いまして、予防接種から2ヶ月以上経過しての妊娠成立であり、胎児への影響はないものと判断してよいと考えます。
妊娠前に受けておくべき予防接種と接種後の避妊期間について整理しておきましょう。
妊娠中、お母さんとおなかの中の赤ちゃんは、胎盤を介してさまざまな栄養交換、酸素交換を行っています。しかし同時に、感染症のウイルスなども胎盤を通過してしまいます。そのため、風疹や水痘などの病気に母体が感染すると、先天性風疹症候群・先天性水痘症候群など、赤ちゃんへも重大な影響が出る可能性があります。
これらを予防するために、妊娠前に受けておくべき予防接種は、風疹、麻疹、水痘、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)などがあります。これらはいずれも「生ワクチン」と呼ばれる種類の予防接種で、毒性を弱めた病原体を接種します。そのため、すでに妊娠した妊婦への生ワクチン接種は、理論上ワクチンウイルスが胎児へ移行する危険性があり、原則は禁忌です。そこで、上記の生ワクチンの予防接種前の避妊状態、予防接種後の避妊期間の指導が重要になってきます。
ワクチンの薬剤添付文書で接種前1ヶ月、摂取後2ヶ月の避妊期間が記されているのは、風疹・MR(麻疹・風疹混合ワクチン)・水痘の3種類であり、「妊娠可能な婦人においては、あらかじめ約1ヶ月間避妊した後接種すること、及びワクチン接種後約2ヵ月間は妊娠しないように注意させる」、おたふくかぜワクチンは「妊娠中は摂取しないこと」とされています。
しかしながら、以前より避妊期間を待たずに妊娠すること、妊娠していることに気づかずにワクチンを接種してしまうことは、国内外でしばしば起きており、妊娠初期の妊婦とその家族、その懸念に対応する医療者を悩ませていました。
こうした懸念に対して、世界的な臨床疫学統計からは、以下のような疫学研究が一つの結論とされています。
(1)妊娠していることを知らずに風疹含有ワクチンの接種を行った症例、ならびにワクチン接種後30日以内に妊娠した症例、合計2292人について検討したところ先天性風疹症候群の児の出生は見られなかった。
(2)妊娠判明前3ヶ月以内あるいは妊娠初期に偶発的にワクチン接種が行われたことによる先天性水痘症候群は報告されていない。
『産婦人科診療ガイドライン産科編(2017CQ104-3)』の「添付文書上いわゆる禁忌の医薬品のうち、妊娠初期に妊娠と知らずに服用・投与された場合(偶発的使用)でも、臨床的に優位な胎児への影響はないと判断してよい医薬品は?」という表に、生ワクチン(風疹ワクチン、水痘ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、麻疹)として記載されています。
しかしながら、赤ちゃんを妊娠中の感染から守るためのワクチン接種ですから、指導された避妊期間はしっかり守って妊娠に臨まれることをできるだけ心掛けるようにしたいものです。
なお、ここでの話は「生ワクチン」に関するものです。インフルエンザの予防接種は、不活化ワクチンであり、妊娠中の接種はむしろ推奨されています。
先生のプロフィール
順天堂大学医学部卒業後、関東労災病院産婦人科・日立総合病院産婦人科・国立霞ヶ浦病院産婦人科などに勤務した後、米国コロンビア大学医学部へ研究留学。帰国後は、社会保険中央病院医長、愛育病院産婦人科部長を歴任し、1996年11月に秋葉産婦人科病院の第4代院長に就任。2009年8月、WHO/UNICEFより「赤ちゃんに優しい病院」、BFH ( Baby Friendly Hospital ) の認定を受け、2014年には「ぽっかぽかクラブ(育児サークル)」や産後ケアセンターを設立するなど、幅広いサービスで地域の女性たちの妊娠・出産・育児をサポートしている。-
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