
Q.帝王切開か自然分娩か、その判断の基準は?
骨盤が狭いために帝王切開の人もいるし、運よく自然分娩が可能な人もいると聞きました。私の場合は、骨盤が狭く(10センチ位)余裕がないことのほかに、仙骨がまっすぐで、通常の分娩では赤ちゃんが回旋異常を起こすかもしれないと指摘されています。「安全のために予定帝王切開」を勧める場合もあると思いますが、「安全のため」という選択肢は、具体的にどういうことを指すのでしょうか。骨盤の大きさ・形がよくないという理由による胎児の障害や死亡率が、一般的に高いからでしょうか。
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『「安全のために予定帝王切開」を勧める』理由としては、おそらく、帝王切開の持っている危険よりも「仙骨がまっすぐで回旋異常を起こすかも知れない危険」の方が大きいときに限られる、と考えられます。「仙骨がまっすぐで回旋異常を起こす」と分娩の進行が遅くなります。強い陣痛が長い時間続くと、胎児への酸素供給や、胎児からの炭酸ガスの洗い出しが影響を受け、胎児の低酸素血症やアシドーシス(酸性血症)を起こしやすくなります。お母さんも疲れて、脱水を起こしたり、自ら産もうという気力を失ってしまったりします。帝王切開の持っている危険については、まず母親に対しては、お腹を切るのですから当然出血が多くなる可能性があります。子宮に傷がのこるので、次の妊娠でも、出産は帝王切開になってしまう可能性が高くなります。麻酔のために血圧が下がったり、麻酔後の強い頭痛が、1~5%くらいの方に見られます。また、子どもに対しては、呼吸への影響があります。子宮の中での胎児は、呼吸の練習のための呼吸運動をしています。このとき空気ではなく、羊水を肺に吸い込むことになります。また肺胞細胞からの分泌液(肺胞液)でも満たされています。これが経膣分娩では、胸が産道を通過するときに圧迫されて、肺胞や気道を満たしている羊水は絞り出され、子どものからだが産道を通過した途端に、入れ替わって空気が肺に吸い込まれるのです。しかし帝王切開では、このような過程がないために、空気が肺の中に充分に吸い込まれず、呼吸の確立がおくれることになります。一過性多呼吸症候群といわれるものです。これらの危険はどれも乗り越えることができるものですが、安易に帝王切開をやるべきでないことはわかると思います。一方骨盤が小さければ、胎児は通過できないのですから、「胎児の障害や死亡」というよりも、生まれるためには帝王切開しかない訳です。形がよくない場合にも、その程度が強ければ、骨盤を通過できなかったり、通過に時間がかかり、最初に述べたような、子どもの低酸素血症や、アシドーシスを起こす可能性があります。しかし子どもは胎児であっても、抵抗力はありますから、例えば分娩時間は30時間くらいまでは、初めてのお産ではかかることがありうると考えています。陣痛が弱ければ時間がかかっても胎児への影響は少ない訳で、この場合には母体への影響(疲労・体力の消耗・気力の消失)を考えなければならなくなるのです。
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▼ 堀口 貞夫先生のプロフィール
元愛育病院院長、元東京大学医学部講師。妊婦が安心して、自分が納得のいくお産をするために、のべ4万人という妊・産婦をあたたかく見守ってきた。「妊婦のことを親身になって考えてくれる」と評判が高い。JR四ツ谷駅前の「主婦会館クリニック からだと心の診療室」(主婦会館プラザエフ4F)元院長でもあり、女性のからだと心を両面からサポートしていた。著書に『あなただから だいじょうぶ』(赤ちゃんとママ社)、『改訂版 夫婦で読むセックスの本』(電子出版)など。
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