あなたに「人生の師」はいますか?

  • 2018-05-31 21:10
  • 一般公開
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5月になると思い出す数々の詩。このブログでも何度か紹介している詩人、高田敏子が平成元年5月28日に亡くなってから、早30年が経ちました。

私が高田敏子先生の詩に出会ったのは、次男を生後6ヶ月で亡くし、三男のあとに生まれるはずだった子を流産しながらも子育てに奮闘していた時期に重なります。

当時、朝日新聞の家庭欄に詩を連載していた高田先生は、日々の暮らしの中の喜びを誰にでもわかる言葉で表現する詩人として注目を集めていました。

1人の母の視点で書かれたあたたかみ溢れる詩の数々…その一篇一篇に、私の心が癒されていったのを昨日のことのように思い出します。
ーー新緑の中、母を呼ぶ子どもの声に重なる一篇ーー
呼び声  (高田敏子「月曜日の詩集」より)

まちかどや 公園などで
よく耳にする言葉
「おかあさぁーん」
思わずふりむいてしまうのは
私だけではないだろう

おばあさんは思いだす
遠い戦地でなくなった息子のこと
若い母親は
乳房がキュッと張ってくるのを感じる

そのころ
るすばんの子どもたちも
呼んでいるにちがいない
遊びあきたに庭や

食卓のまえでこっそりと
「お か あ さ ん」
母と子は
いつも心のどこかで呼び合っている
若葉がきらりキラリと光ったり
ゆれたりするのは
やさしい心が いつも
空のしたを渡っているからです

ほどなく縁があって先生が主催する詩作の教室に通うようになった私は、育児日記がわりに散文詩を書くようになりました。そして詩作を通じて「どんなことがあっても肯定的に人生を受け止める」という、高田敏子の生き様に大きく影響を受けていきます。

自分が本気でイメージして向かいたい方向に努力すれば、必ずその方向に進むことができる…。子育て真っ最中の時期に、この「究極的な前向きさ」と「ぶれないものの見方」を学べたことで、私の生き方は大きく変わっていきました。
ーー母と子。毎日の暮らしの中にある大切なものに気づかされる一篇ーー
ベンチ  (高田敏子「月曜日の詩集」より)

母と子と
一日じゅう しょっちゅう
話をしているようでも
ほんとの話なんて
あんがい していないものです
だから 買い物の帰りみち
おせんたくのすんだあと
ほんの十分間でも
こうした家のそとにでて
話をしてみましょう

そのために

やさしい木かげがあるのです
そのために
あいたベンチがあるのです

80歳を越えた今でも「こんなとき、高田敏子ならどうするだろう」と思うことが少なくありません。先生が亡くなってから30年経っても、私の心の中には「高田敏子」は生きています。
ーーそして今。この詩に描かれているような、おばあさんを目指しつつーー
おばあさんの手  (高田敏子「月曜日の詩集」より)

5人の子どもを育ててきた
かわいい孫も育ててきた
畑をたがやし
種をまき
たくさんのおみそ
たくさんの漬物
納屋にいっぱい
つくってきた

おばあさん!
あなたの手がふれると
なんでも命をふきかえす
破れた足袋も
捨てられた糸も……


ぜひ、あなたも一歩を踏み出して、ご自身の人生の師を見つけて欲しい…そうヤンババは願っています。
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