お弁当パフォーマンス

最近、毎日お弁当をつくっている。
なぜなら娘が小学生になったからだ。

ん？
小学生には給食があるじゃないか。

甘い。
私は甘かった。
４月１日に学童が始まってから
小１のきゃつらに給食が出るまでに、
なんと３週間かかるのだ。

３週間は長い。

正直仕事も忙しく、
ほんとうに毎日フラフラしながらフライパンを握った。
毎朝お弁当ができあがり私が写メってるあたりで
やっと娘が起きてくる。
こちらの苦労も知らずに‥。

そんなとき思い出すのが、
同じくワーキングママであった
我が母のお弁当だ。

母は家事一切が苦手で、
当然それはお弁当も同じだった。

私が遠足でナントカ山の頂上に着く頃には、
リュックサックの中から
「寄り弁」ならぬ
「まっちゃいろ弁」が姿を現す。
何かの肉と何かの野菜を炒めて、冷める前につめる。
だから汁が弁当箱に充満し、白飯を染める。
あとはウインナーと、ボロボロの卵焼き。

すべてが茶色いのだ。
三原色の考え方とか、
バランで区切るとか、
市販品を駆使するなどの発想は持ち合わせていない。
「いしいのおべんとクン♪ミートボール」って
CMやってたじゃないか母よ。
でもそんなCM見てないんだな。
家での母は、
仕事から帰ってきて苦手な家事に悪戦苦闘するか、
私へ本の読み聞かせをするか、
疲れ果てて居眠りするか、
そのどれかだった。
今の私と同じだ。

誰でもこうして、
母の弁当作りの苦労がわかる時が来る。
しかしわかったとしても
今さらなかなか「ありがとう」とは言えない。
言えるとしたら母が死ぬ時かな。
いや死んだあと墓に言うだけかもしれない。
それじゃ割に合わない。

だから私は、ときどき娘の前で
「疲れた」とか「大変だ」とか「眠い」とか
言うことにしている。

労を知れ。
恩を感じろ。
憩をよこせ。

その甲斐あってか、娘は言う。

「できたらでいいんだけどお〜、
　疲れてなかったらでいいんだけどお〜、
　たいへんだったらいいんだけどお〜、

　明日のお弁当は、
　ハンバーグと
　卵焼きと
　スパゲッティと
　オムライスもつめてくれるう〜？」

やっぱり割に合わないな。


おかん　小