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子どものうつ病の怖さを理解してください

少なかった日本のうつ病患者数は、近年急増

世界保健機関(WHO)は、2017年3月に「2015年時点でうつ病を抱える人は、世界3億2200万人に上り、2005年からの12年間で約18%増加したと推定される」と発表しました。世界の人口は約73億人ですから、全人類の25人の1人がうつ病ということになります。

またWHOは、「うつ病は自殺の大きな要因」と指摘し、自殺が、世界全体の15~29歳の若者の死因の2番目に位置していることに警鐘を鳴らしました。

他の先進国と比較すると、日本のうつ謬患者数は低いことが知られています。しかし、ここ20年間で見ると、明らかに増加しています。厚生労働省の患者調査によると、1996年には43.3万人だったうつ病患者は、2008年には104.1万人と100万人を超え、2016年には、111.6万人になっています。

日本はうつ病患者が受診しない国

そして、うつ病増加の比率は、高齢者層と若年者層で大きくなっています。高齢者層のうつ病の増加は、高齢化によって高齢者が増加していることが主な原因ですが、人口が減少している若年者層で、うつ病が増加している理由としては、まず「10代、20代でもうつ病にかかることがある」という認識が広まり、医療機関で受診する青少年が増えたことであります。もうひとつは、青少年がうつ病を発症しやすい環境になってきていることが指摘されます。

そもそも日本のうつ病患者の比率が比較的低かったこと自体が、「うつ病という病気があり、それは医師の治療を受けるべきもの」という認識が、他の先進国より普及していないため、と多くの専門家が指摘しています。そして、WHOが指摘しているように、「うつ病は自殺の大きな要因」です。

うつ病の放置と自殺の関係

日本は、他の先進国と比較して自殺者数が多いことが知られています。こちらは近年、減少傾向にあり、2011年に年間自殺者数が3万人を切っていますが、それでも自殺率は圧倒的に高いです。うつ病が自殺の大きな要因であり、日本のうつ病患者が比較的少なく、自殺者が比較的多いということは、「うつ病を治療せずに放置する例が多いから自殺者が多い」という関係が容易に想像できます。

そして、若年層に注目すると、日本の15~39歳の若い世代の死因1位は自殺であることがわかります。他の要因で死なないから自殺が上位に来ることは確かですが、先進7か国で15~39歳で自殺が死因1位なのは日本だけであり、若年者の自殺が多いことは確かです。

うつ病は、うつ病体質の人が発症する病気

うつ病の原因としては、さまざまなことが指摘されていますが、まだ不明なことが多い病気です。しかし、脳内の神経の連絡をつかさどる神経伝達物質の欠乏や神経自体の異常、脳の組織の異常などが関連していることがわかってきています。つまり、うつ病は、脳の機能に異常がある人に発症する病気なのです。この脳の機能の異常は、体質によるもので、その多くは遺伝的な要因とされ、「うつ病体質」の人のみがうつ病を発症すると考えられています。日本人が生涯のうちでうつ病になる確率(生涯有病率)は、6.5%とされ、これは15人の1人という確率で、決して低くはありません。

自殺に直結しやすい青少年のうつ病

うつ病体質の人でも、一生発病しない人がいます。その一方で、少年・少女時代にうつ病を発症する例もあるわけです。うつ病は、誰にとっても非常につらい病気ですが、発症時期が早いほど、混乱は深くなります。育ち盛りの年齢には、さまざまなものに接しながら、自分の感じ方や考え方を育てて人格形成をしているので、うつ状態が人格形成に及ぼす弊害の大きさはよく理解できます。

また、大人と比較して、子どもは自分が味わっている苦痛や不安を適切に感じ、言葉で表現するトレーンニングが十分ではないので、周囲が気づかないうちに症状が悪化していく点も深刻です。

近年、日本でもうつ病は、10歳ぐらいの子どもに見られ始め、年齢とともに増加しています。そして、思春期という心の状態の不安定で多感な時期には、さらに増加します。日本の場合、うつ病は小児の2%程度、若者の5%程度発症するといわれ、2003年の北海道大学の調査によると、小学生の約1.6%、中学生の約4.6%がうつ病という結果が出ました。そして、この比率は、現在ではさらに増加していることが確実視されています。

青少年のうつ病は、引きこもりや登校拒否に直結しやすく、日常生活が正常に営まれなくなります。ここにいじめや両親の不和、親の過干渉・愛情不足などが加われば、さらに悪化し、自殺という最悪の事態に至るケースも少なくありません。

また、思春期のうつ病には、慢性化する例も多く、劇的な症状を示さない代わりに、大人になってから、しばしばうつ病に悩まされるといったケースも多く見られます。

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兆候が見られたら、医師の診断を受ける

4月は、環境が変化する月であり、そこで受けるストレスによって、うつっぽい状態になりやすい時期です。これは、一般に「五月病」と言いますが、この状態の異常さが度を越している、あるいは長期に及んで精神の不安定状態が続くという場合には、うつ病を疑う必要があります。五月病になりやすい環境は、うつ病を発症しやすい環境でもあるのです。

そこで、万が一、子どもがうつ病に陥った場合、それを早期に確認し、医師の診断を受けさせてあげるという心掛けが必要です。

図表は、青少年のうつ病の兆候を示したものです。この10の症状の内、4つ以上が当てはまるようならば、うつ病の可能性を意識し、早めに医師の診察を受けさせてあげることをおすすめします。診療科は、精神科ですが、いきなり精神科というのも抵抗があるでしょう。その場合には、保健所にいる公衆衛生医師の診断を受け、必要なアドバイスを受けるとよいでしょう。

また、うつ病を患っている人は、人との関わり合いを避けようとしますから、引きこもりがちのわが子を、強引に外へ連れ出そうとしたり、詰問をしたり、干渉をしたりするのは逆効果になります。そして、もっともしてはいけないことに励ましがあります。「頑張ればうまく行くから、頑張れよ」といった励ましは、症状を悪化させる結果にしかなりません。

のんびりとゆったりとした環境を心がけ、医師の指示に従って、子どもに寄り添ってあげてください。

図表:青少年のうつ病の兆候チェックポイント
1.自信喪失や無力感、悲観などが見られる
2.寂しそうだったり、涙ぐんだりすることがある
3.不安や焦り、いら立ちの様子が目立つ
4.無感動、無関心な様子が目立つ
5.やる気、活力が落ちている
6.集中力が落ち、考えがまとまらない
7.夜眠れない、朝起きられないなどの睡眠の障害がある
8.食欲が低下している
9.成績が落ちてきている
10.友達との交流が少なく、引きこもりがち

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