
無事のご出産おめでとうございます。
最近、第1子出産後のセックスレスという話をよく聞きます。私は産婦人科医ですから産後の乳児を育てている方から話を聞くことが多いのです。そして初めての子育てを経験しいている方が多いのです。そして少子化の中で育っているので身近に乳児を育てている人を見た経験もない人が多いのです。1974年頃から女性が一生のうちに生む子どもの数(合計特殊出生率)は2以下になりましたので当然のことです。
抱いたことも、おむつを替えた経験もないままに母親になって育児の全責任を負わされるのが今の女性たちです。ただ寝ているばかりに見えた赤ん坊が突然泣き出す。育児書にあるように、おむつが濡れて気持ちが悪いのかとおむつを取り替えたのに泣き止まない、お腹が空いたかと乳首を吸わせようとしても背を反らして大声で泣く。なんとか乳首を含ませても、ちょっと吸っただけでまた泣き出す。「お腹がすいているのでしょう。ちゃんと吸いなさい」と思わざるを得ないでしょう。社会で仕事を上手にこなしていた方ほど、決められているようにやっているのに何故?と思うのではないでしょうか。
妻から母親に変わるということはとても大きな変化です。自分で考えて行動すればよかった妻から、何もしゃべれないくせに母親に頼らなければ生きて行けない赤ん坊を自分の責任で面倒を見なければならない。いままで赤ん坊を育てる練習などしたことは無いのです。それなのに「母性本能」とかいって、生まれつき子どもを育てる能力を持っているのが女性であると決めつけられるのです。(もっとも最近は母性本能という言葉を使われることが少なくなったように思いますが)そうは言われないけれど、母親の当然の仕事のように言われるプレッシャーは重荷になることもあるのではないかと思います。
さて、セックスについてですが、お互いに抱きたい、抱かれたい。そして身も心もこれ以上無いくらいに近くにあることを感じたい、そうなりたいと思ったときにすることであると思います。どちらかが、今日はその気になれないと思ったときは夫婦であっても「我慢してでもやること」ではなく、「やることを我慢すること」だと思います。その優しさが、思いやりが少し気持ちに余裕ができたときに抱かれたいという気持ちを起こすのではないでしょうか?
先生のプロフィール
元愛育病院院長、元東京大学医学部講師。妊婦が安心して、自分が納得のいくお産をするために、のべ4万人という妊・産婦をあたたかく見守ってきた。「妊婦のことを親身になって考えてくれる」と評判が高い。JR四ツ谷駅前の「主婦会館クリニック からだと心の診療室」(主婦会館プラザエフ4F)元院長でもあり、女性のからだと心を両面からサポートしていた。著書に『あなただから だいじょうぶ』(赤ちゃんとママ社)、『改訂版 夫婦で読むセックスの本』(電子出版)など。