【ベビカム相談室 フェロー】 愛育クリニック小児科部長・アレルギー専門医

子どものアレルギーについて

  • 2016-06-29 14:00
  • 一般公開
  • テーマ:
はじめまして。
小児科医の渋谷紀子と申します。現在は乳幼児健診や予防接種などの母子保健に重点をおく施設に勤務しておりますが、小児科の一般外来やアレルギーの専門外来も担当しています。小児科医になって30年以上たちますが、4人の子どもの出産・子育てを経験しました。昔は医師の育児休暇などありませんでしたので、ほぼ産休のみで勤務を続けてきています。第1子と第4子の年齢が一回り違うので、18年間保育園にお世話になりました。ですので、子どもを預けながら働くママたちをぜひ応援したいと思っています。

今回は、私の専門領域である子どものアレルギーについて、ベビカムのアンケート調査の結果をみながらお話ししたいと思います。521名の方にご回答いただきました。ご協力ありがとうございます。

Q1.『アトピー性皮膚炎は、血液検査で診断できる』は正しいと思いますか?


まずは、アトピー性皮膚炎についてです。「アトピー性皮膚炎は、血液検査で診断できる」に対し、42.8%の方が「正しい」と回答されましたが、これは「正しくない」が正解です。日本アレルギー学会や皮膚科学会が提唱しているガイドラインでは、①かゆみがあること、②特徴的な湿疹やその分布を認めること、③良くなったり悪くなったり慢性的な経過をとること、の3つを満たすことをアトピー性皮膚炎の診断基準としています。血液検査で○○に陽性、ということは、診断には関係ありません。食物アレルギー合併の可能性を調べるときにそういった検査をすることがあるかも知れませんが、通常アトピー性皮膚炎の診断に血液検査は不要です。TARCという検査が行われることがありますが、これは診断ではなく重症度のめやすとして使われるもので、乳児などではもともと基準値が高いので、注意が必要です。

Q2.『風邪をこじらせると喘息になる』は正しいと思いますか?


次に、喘息について。「風邪をこじらせると喘息になる」には半数以上の方が「正しくない」と回答されました。「RSウイルス感染症」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 小さな赤ちゃんがかかると気管支炎や肺炎になりやすく、治った後も、しばらく喘息のようなゼイゼイを繰り返すことがあります。このRSウイルスや、風邪のウイルスとして代表的なライノウイルスは、喘息の発症や悪化と関係すると言われています。もちろんこれらにかかったからといって皆が喘息になる訳ではありません。小さい頃にいろいろな感染症を経験した方が、将来アレルギー疾患になりにくいという説もあります。ウイルスの種類や、感染したときの重症度、もともとの本人の体質、などが複雑に絡み合うと考えられるので、「どちらとも言えない」を正解とさせていただきます。

Q3.『サバを食べてじんましんが出たら、食物アレルギーである』は正しいと思いますか?


最後に食物アレルギーの質問です。「サバを食べてじんましんが出たら、食物アレルギーである」について、「正しい」と「どちらとも言えない」がいずれも40%くらいでした。「どちらとも言えない」と回答された方は、「仮性アレルゲン」についての知識をお持ちなのかも知れませんね。食品にもともと含まれる(あるいは保存中に産生される)化学物質で、アレルギーと似た症状を起こす物質を仮性アレルゲンといいます。鮮度の落ちた魚などでは、ヒスタミンという化学物質(仮性アレルゲン)が産生され、かゆみやじんましんを起こす原因となります。これは食物アレルギーとは異なるしくみです。ヤマイモ、ホウレンソウ、ナス、トマト、バナナなども仮性アレルゲンを含むことで知られています。しかし、中には本当にサバそのものに対する食物アレルギーの方もいらっしゃいますので、「どちらとも言えない」が正解です。
アレルギーは最近話題になることが多いですね。少しでもご参考になれば幸いです。
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