【ベビカム相談室 フェロー】 東京情報大学 看護学部 看護学科 准教授

「産後うつ」について

  • 2016-06-29 14:00
  • 一般公開
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出産した女性の10人に1人の割合で産後うつのリスクがあることが知られています。実際に、出産後数年たった女性たちと産後うつの話をしていると、「私もそういえば産後うつだったかも」「実は赤ちゃんがかわいいなんて思えなかった」などと話す方がたくさんいます。「え、みんな、産後うつ?」そんな風に思えるくらい多く、10人に1人というリスク以上に産後うつのリスクは皆持っているのではないか、そう感じていました。


Q1.産後1年くらいの間で、自分が「産後うつ」だったかもしれないと思われる時期はありますか?


そこで、今回、ベビカムアンケートで、「産後1年くらいの間で、自分が「産後うつ」だったかもしれないと思われる時期はあるか」についてたずねてみました。その結果、産後うつと診断された人は1.3%、産後うつと診断されてはいないが自分でそうだったかもと思う時期がある人は46.8%という結果でした。出産後の女性の約半数は産後うつだったかもしれない時期があると感じていました。これは驚くべき多さといえますが、一方で産後の女性たちとの会話と一致するなあと私自身はとても納得がいく結果でした。


Q2.「産後うつと診断された」または「産後うつと診断されてはいないが自分でそうだったかもと思う時期がある」とお答えになった方への質問。それはいつごろでしたか?



では産後のどの時期にそう感じたのか。最も多かったのは産後1か月で33.6%でした。ついで、産後2か月19.2%、産後0か月15.3%、産後3か月14.8%でした。これは、育児不安が高まるといわれる産後1か月未満(産後0か月)の時期よりも、産後1か月健診を過ぎ2か月になるまでの間(産後1か月)に、産後うつかもと感じているということになります。なぜ出産後すぐよりも1か月程度たってからこのような状況が生まれるのでしょうか。

この時期は、里帰りしたり、実母・義母に自宅に来てもらったりしてサポートがあった時期が過ぎ、自宅で母と子二人きりの生活が始まる時期にあたり、急に孤独感が強まる時期なのではないかと考えられます。夫(パートナー)の有休や育休も産後1か月までのことが多く、家族からのサポートがなくなり、夫(パートナー)も休暇どころか定時退社さえも難しくなり、一気に母子二人になってしまいます。少しずつ育児に慣れてきているとはいえ、授乳リズムもまだ確立できていないことも多く、夜間の授乳で寝不足が続きます。子どもの泣きが強まり、何をしても泣き止まない状況が出てくるのもこの頃です。外出もできず、泣きの原因もわからず、自分のからだもままならない……、これでは心も疲れてしまいますよね。

Q3.「産後うつ」(だったかもしれない)の状況からどのように抜け出しましたか?(複数回答可)


そんな状況からいかに抜け出すのか。産後の女性たちとの会話からは「でも気づくと抜け出していたんだよね」という言葉も多く聞かれていました。「子どもが夜寝るようになったら私も元気になっていた」「子どもの反応がはっきりしてくるとかわいいなって思えるようになった」などです。今回の調査でも、「いつのまにか抜け出していた」ケースが最も多く42.8%でした。ついで、「自分で気分転換を図った」34.1%、「夫(パートナー)にサポートしてもらった」32.8%、「夫(パートナー)以外の家族にサポートしてもらった」31.9%でした。「医療機関を受診する、カウンセリングを受けるなど専門的なサポートを受けた」は少なく7.4%でした。

自由記述にも、夫と話したり、家族に話したり、ママ友に話したり、自分に近い誰かと話をして溜め込まないようにした人が多いようでした。なかには、今真っ最中で抜け出られていないというご意見も複数ありました。産後ケアセンターに入所し、同じ境遇のママ友ができたことで抜け出たという人もいました。とにかく対応の第一歩は「ひとりで抱え込まない」こと。身近な夫(パートナー)に言えれば一番ですが、それが難しければ、実家の家族、同じ境遇を過ごしたママ友に、些細な事でも話していきましょう。自然に抜け出られているようだから何もしなくていいということではありません。一部には本当に産後うつになってしまう人もいるわけですし、社会と断絶して子育てをしていく孤独感はとてもつらいものです。だから、家族のサポート、社会のサポートを少なくとも産後3か月程度まで準備しておくことは、とても重要なことなのです。


産後うつをはじめとした出産前後のメンタルヘルスは、実は妊娠中から知っておきたいこと。それも、ママになる女性たちのみならず夫(パートナー)や家族も一緒に知っておくことが大切です。最近は父親にも産後うつがあらわれることが明らかになっています。子育ては母親・父親だけが負うものではなく、行政のサポートや産後ケアなども積極的に利用しましょう。産後3か月までのサポート計画は妊娠中から立てておくことをおすすめします。
 そして、今まだ抜け出られていないというママたちへ。まずは1日1回は赤ちゃんを連れて外へ出ましょう。また、可能なら、自分を取り戻す時間を作りましょう。夫(パートナー)に赤ちゃんを預けて一人になる時間を持つだけで、これまでの自分、これからの見通しを考えることができるでしょう。無理しない、頑張りすぎないことが大切です。
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