【ベビカム シニア・アドバイザー】 埼玉医大総合医療センター新生児科 教授・小児科医

おちんちんの話

  • 2015-06-29 15:30
  • 一般公開
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例年になく早かった桜の開花と言い昨今の暑さと言い、やはり地球の温暖化の影響なのかもしれないですね。昨年の夏は猛烈な暑さが続きましたが、今年ももうじきに暑い暑い夏がやってくるのでしょうか。

さて、今回は男の子だけにある、そう、おちんちんについてお話しましょう。

ギモンの種は尽きないおちんちんの話

おちんちんは女性にはないものだけに、初めて男の子を育てるお母さんはいろいろと戸惑うことも多いようで、育児相談や乳児健診の場で、おちんちんが話題になることは少なくありません。本当はお父さんがキチンとお母さんの疑問に答えてあげることができればいいのでしょうが、男性にとってもこの話題は何やら気恥ずかしいものなのです。また、健診の場でも、保健婦さんやお医者さんによっては必ずしもはっきりしたアドバイスがもらえないこ ともあって、ますます謎は深まるばかり…なのでは?

おちんちんに関して健診などの場で最も多く聞かれる質問は「おちんちんが皮をかぶっているけれど…」ですね。この皮は自然にむけるようになるのか、入浴の時などに皮をむいて、中まで洗う必要があるのか、などなど、ギモンの種は尽きることないようです。

簡単にむき出せるのは3歳で90%

出生直後は、ほとんど全ての赤ちゃんでおちんちんを包む皮(「包皮(ほうひ)」と言います)とおちんちんの先頭部分(「亀頭(きとう)」ですね)はくっついており、手を使って簡単にむき出す(「包皮翻転ができる」というのが専門的ないい方です)ことはできません。その後、生後33~4カ月頃になると少しづつ自然にむけるようになってきますが、それでも生後6カ月の段階で手で簡単に皮をむける子どもは20%程度で、大多数の乳児では皮をむくことはまだ出来ません。その後は成長に従ってだんだんとできるようになって、3歳の時点では90%前後のお子さんで包皮翻転ができるようになると言われています。

しかし、この時点でも、約10%のお子さんはまだ包皮と亀頭がくっついた状態にあり、全ての男性で包皮・亀頭の癒着が完全に見られなくなるのは思春期に入ってからです。

包皮がおちんちんを覆ってしまってむき出せない状態が「包茎」です。包茎には包皮の長さが長いために起こる「仮性包茎」と包皮の出口が部分が狭くてむき出せない状態の「真性包茎」とがありますが、右記のような事情からこの両者を正確に区別できるようになるには、思春期まで待たなくてはなりません。時々、乳児健診の場でおちんちんの皮をむくようにと指導されたり、あるいはその場でムギュっと無理矢理むかれてしまった(当然、痛いです!)などという話を聞きますが、3~4歳までの時点で、そのようなことをする必要は普通ありません。無理矢理にむいたりすれば、包皮の部分が切れてしまったりして、かえって危険ですし、第一、無理矢理むいてしまうというのは野蛮すぎますね。

最も多いトラブルは包皮炎

小さいうちに何らかの処置をしなくてはならないのは、包皮の出口が小さすぎて、おしっこをするときの妨げになっている場合(例えば「力まないとおしっこが出ない」といった状態です)や、包皮の中側の炎症である包皮炎が繰り返しおこる場合などに限られます。子どものおちんちんにまつわるトラブルの中で最も多いのは、この包皮炎でしょう。

包皮炎は程度が強い場合には亀頭の炎症も併発しますし、陰茎や尿道に炎症が及ぶこともあります。おちんちんの先の皮が赤く腫れていたり、おしっこをするときなどに痛がるような症状があるなら、小児科医に診てもらってください。それでも、大多数のお子さんではこのような炎症に出会うことは少ないのですが、もし繰り返して炎症が起こる場合には手術によって包皮の部分を切り取る処置をする必要があります。この手術自体は単に包皮を環状に切除するだけなので特別危険な手術ではありませんが、それでも、乳幼児では手術に際して麻酔が必要となるために、1日から数日の入院が必要です。また、宗教的、文化的な理由から、生後ほどない時期に包皮の切除を行なう場合もあります(「割礼」ですね)が、見かけだけの問題でこのような処置を行なうことはおすすめできません。

まず、赤ちゃんにとってはおちんちんが皮をかぶっているのは正常な状態で、気にする必要はないということをぜひ知ってください。おちんちんの皮は、成長にともなって徐々にむけるようようになりますし、また、無理矢理むく必要もありません。ただ、皮をかぶっている状態は、むき出しになっている状態に比べれば不潔になりやすいことも事実です。おちんちんを含め周辺部分の清潔を心がけましょう。おむつがたっぷりおしっこを吸ったままで、おむつを外すとぷ~んとおしっこ臭いなんてことのないようにしたいものですね。また、お子さんがきたない手でおちんちんをいじったりするようでしたらキチンと注意することも必要です。

(2002.05)
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