性感染症から自分を守る(せいかんせんしょうからじぶんをまもる)

性感染症(STD/STI)とは


 性感染症とは、セックスによってうつる感染症の総称です。昔は「性病」と呼ばれ、いわゆる「遊んでいる人」がかかる病気だと思われていましたが、性感染症は、セックスを経験したことのある人ならだれでもかかる可能性のある病気です。
 以前は「性病予防法」という法律で、梅毒、淋菌感染症、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫という病気が性病として指定されていました。
 ところが近年になり性器クラミジア感染症性器ヘルペスエイズなどの感染が広まり1999年には「感染症新法」という新しい法律ができました。
 現在、問題になっている病気は、性器クラミジア感染症性器ヘルペスエイズ梅毒淋菌感染症などです。そのほかにも腟トリコモナス症、けじらみ、疥癬、成人T細胞白血病、B型およびC型肝炎、マイコプラズマなどがあります(その他の性感染症)。軟性下疳や鼠径リンパ肉芽腫は、ほとんど見られなくなりました。

女性のほうが感染しやすいという報告も


 年々、性感染症はふえています。複数のセックス・パートナーを持つ男女がふえているのに加え、性器クラミジア感染症などでは自覚症状が少ないため、感染に気づかずにセックスしたり、感染予防のための知識を持っていないなどが理由として考えられます。
 また、性感染症は女性のほうが感染しやすいという報告があります。「全STD感染症全国疫学調査」の2001年~2002年の全国統計によると、全年齢層で性器クラミジア感染症は女性は男性の1.9倍、20歳代では2.4倍、10歳代では4.1倍と、それぞれ女性の罹患率が高くなっています。
 とくにティーンエイジャーの感染者の増加は、セックス体験の若年化を物語っています。また、すべての性感染症でも全年齢層で、女性が男性の1.2倍も多くなっています。

性感染症から身を守るには?


 あふれる性の情報、乱立する性風俗店、セックス体験の若年齢化、不特定多数とのセックスなど、「性」が横行する現在、性感染症から身を守るためには、コンドームをつける以外に方法はありません。
 「コンドームの装着は、セックスの常識」という考え方を持つことがたいせつです。
 たとえパートナーが信頼できる相手だとしても、お互いが完全に感染のリスクがないといいきれないときは、かならずコンドームを使って予防します。
 コンドームを使わないでセックスをしてもよいときとは、パートナーとともに性感染症の検査を受け、すべての病気に感染していないと診断され、なおかつ、赤ちゃんがほしいときだけです。とはいっても、コンドームは女性の意思だけでは使えません。
 とくに、「違和感があるからいや」「めんどう」「ムードがこわれる」などの理由でいやがる男性がいますが、これは問題です。性感染症についてよく話し合い、パートナーの理解を得ることです。いくら話しても理解してくれず、自分の欲求だけを主張する相手なら、ほんとうにあなたのことを考えているとは思えません。
 将来、つらい思いをしないためにも、そのパートナーとの恋愛そのものを考え直したほうがよいのかもしれません。
 ほかの選択肢として、女性用のコンドーム(コンドームの正しい使い方)を使用する方法もあります。これなら自分の意思で選べるので、男性の手をわずらわせることはありません。薬局で購入できます。

危険なセックス


 コンドームをつけると性感染症に感染するリスクは減りますが、それでも感染しやすいセックスやセックスの類似行為があります。

・生理中のセックス
生理中は子宮の内膜にたくさんの血管が露出して、子宮の入り口がゆるむので、セックスすると腟から細菌などが侵入しやすくなります。また、月経血にウイルスが混じっていると、相手に感染します。

・アナルセックス
肛門にペニスを入れるセックス。肛門周囲には細かい血管が走るため、ペニスを入れると血管が容易に切れ、出血しやすくなります。肛門自体も切れやすくなっています。

・オーラルセックス
性器クラミジア感染症や性器ヘルペスなどは、口から性器、性器から口へと感染します。

・不特定多数とのセックス
ひとりのパートナーとセックスするよりもはるかに感染リスクが高くなります。

感染してしまったら……


 性感染症に感染したら、1日でも早く治療を受けることです。とくに女性に自覚症状の少ない性器クラミジア感染症や淋菌感染症は、発見が遅れることが多いため、感染を広めてしまう原因にもなっています。
 感染したかどうかの自己判断は、性器に「痛みやかゆみ」「できもの」などの異変があるかどうか、おりもののようすがいつもとちがう、などがめやすです。パートナーから感染を告白された場合は、感染の有無にかかわらず婦人科で検査を受けることです。
 またエイズ検査は、地域の保健所で受けられます。プライバシーは守られるので、受けておくことをお勧めします。エイズは、ほとんど自覚症状もなく、10年以上の潜伏期間ののちに発症します。感染がわかったら、かならずエイズの専門外来を設けている病院を受診します。

治療はパートナーといっしょに


 もしあなたが性感染症に感染しているとしたら、高い確率でパートナーにも感染しているはずです。逆にパートナーが感染していても、あなたが感染している可能性も高いといえます。
 たとえば、性器クラミジア感染症では、女性は自覚症状が少ないのですが、男性は尿道炎の症状がでることがあります。男性に症状がある場合は、かならずいっしょに検査を受けて、治療することです。女性は産婦人科で、男性は泌尿器科、もしくは皮膚科を受診しましょう。いま治療をしなければ、今後ふたりにどのような問題が起きるのかをよく話し合い、ふたりいっしょに治すことが、早期治癒の近道です。
 あなただけが治療しても、パートナーにも感染していたら、セックスで再感染します(ピンポン感染)。これでは、いつまでたっても病気が治りません。
 また、治療をはじめて数日間で自覚症状がなくなる病気もありますが、症状がなくなったからといって、細菌やウイルスが消えたわけではありません。そこで治療をやめてしまうと、かならず再発します。いくら症状がなくなっても医師にいわれた期間は、かならず治療を続けてください。

女性に深刻な後遺症


 一般に、性感染症の後遺症は、女性のほうが深刻です。女性器の構造から見ても、生殖器は腟から子宮、卵管と、からだの中へ広がるような構造になっています。腟や子宮頸部に慢性の炎症があると、細菌は上へ上へと運ばれて、炎症は子宮頸管、子宮内膜、卵管、腹膜とどんどん広がります。進行するほど治療がむずかしくなり、そのぶん、後遺症も残りやすいといえます。
 その典型的な病気が、性器クラミジア感染症です。自覚症状が少ないため、治療に結びつきにくく、そのため子宮頸管炎や卵管炎などに進行します。将来、不妊症や子宮外妊娠の原因になることが問題です。
 そのほかに、尖形コンジロームは、原因となるウイルスの種類が子宮頸がん(子宮がん)を起こすウイルスと同類といわれ、子宮頸がんを起こす率が高くなるといわれています。性器ヘルペスでは、一度感染すると、ヘルペスウイルスが神経の根元にすみつき、かぜをひいたときなど、抵抗力が落ちたときに再発します。また、たいていの性感染症が、治療をせずに妊娠・出産すると、赤ちゃんにも感染し、最悪、赤ちゃんを死亡させることがあります。
 精神面では、中途半端に治療をしたり、ピンポン感染をくり返したりすると、性感染症が慢性化し、つねに陰部のかゆみ、炎症、下腹部の不快感といった症状に悩まされるようになります。それにより、精神的に不安定になり、ノイローゼになったり、抑うつ状態を招くことがあります。

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掲載された情報を参考に、気になる症状などがあれば、必ず医師の診断を受けるようにしてください。

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