【ベビカム シニア・アドバイザー】 埼玉医大総合医療センター新生児科 教授・小児科医

赤ちゃんの頭の形、頭の骨の話-その2 大泉門と小泉門

  • 2015-06-29 15:15
  • 一般公開
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いや、それにしても毎日暑いですね。これだけ暑いと、ただでさえ汗かきの赤ちゃんはさらにたくさんの汗をかいて、汗疹(あせも)で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。汗疹だけでなく、戸外に長時間出ていると熱中症や脱水も心配ですね。水遊びやお昼寝などを組み合わせて、体力を消耗しないように注意してあげてください。

頭の前のほうのペコペコ「大泉門」

さて、今回も頭の骨や形についてです。

赤ちゃんの額の真ん中から真っすぐ頭のてっぺんに向かって触ってゆくと、おでこを過ぎた辺りから骨のない、柔らかいクボミが触れてきます。前頭部の骨と側頭部の骨に囲まれたこの部分が「大泉門」と言われる場所です。厳密に言えば、骨がまったくないわけではありませんが、完成した骨で覆われていないので、少し窪んだ感じに柔らかく触れたり、若干周囲から盛り上がって見えたり、その部分が心拍に合わせて脈打ったりします。

赤ちゃんの頭の骨は、狭い産道を通過してくるときに、お互いが重なりあうことで少しでも頭の大きさを小さくして産道を通過しやすいようになっていることは前回もお話しましたね。この頭蓋骨の重なりは、出産直後から数日かけてゆっくりとなくなっていきます。大泉門も出産直後にはそれほど大きくなく、生後4日も経過すると、しっかりした大きさで触れることができるでしょう。

大泉門は1歳半~2歳で閉じます

一般に、この大泉門は生後1歳半から2歳までの間に閉鎖すると言われていますが、閉鎖する時期は実際にはかなりの幅があります。時々「大泉門が早く閉じてしまった」とか「大泉門がなかなか閉じない」といった相談を受ける事がありますが、医学的に問題となる場合には大泉門のとじ方の他に何らかの所見がある場合がほとんどです。

例えば、大泉門が早期に閉じてしまう代表的な疾患として、頭蓋骨の骨早期癒合症があります。しかし、このような場合には、単に大泉門の大きさだけでなく、頭の骨全体の変型や、顔つきの異常が見られることが普通ですし、大泉門が大きくてなかなか閉じてくれないと言った場合には、大泉門の周囲を始めとした頭の骨の継ぎ目が大きく広がっているなどの「プラス・アルファ」の所見があることが普通です。

大きく膨張したら要注意!

時々、赤ちゃんの頭の骨、特に頭のてっぺんの辺りの部分がペコペコした感じに触れることがありますが、これは「頭蓋癆」と言われる状態で、頭の骨の一部が完全に骨化せずに、薄い状態のままで生まれてきたことから生じます。以前は先天梅毒やくる病の症状の一つと言われていましたが、実際にはほとんどの赤ちゃんで病気とは何の関係もないことがわかっており、今では病的な意義はない状態だと考えられていますので、心配はいりません。

最初の数カ月間はペコペコした感じが残りますが、徐々に硬くなって行きます。ただし、早産で早く生まれた赤ちゃんでは、骨を作る材料が不足したり、骨化が順調に進まなかったりすることもあるので、その様な場合には主治医の先生によく相談してください。

頭の後ろのペコペコ「小泉門」

大泉門を通り過ぎて、さらに頭の骨の真ん中を頭頂部から後頭部にかけて触れて行ってください。後頭部に入る辺りに、やはり骨と骨とが重なった小さな窪みがあるのがわかると思います。この部分が「小泉門」です。大泉門と異なり小泉門は出生時には触れないことのほうが多く、逆に、出生直後から小泉門をはっきりと触れることができるような場合には、赤ちゃんの身体について詳しく調べてみる必要があります。特に、早期発見・早期治療が必要と考えられている甲状腺機能低下症は、小泉門が閉じていないことをきっかけに見つかることがあります。

さて、前回と今回、2回に渡って頭の骨に関するお話をしてきました。赤ちゃんの頭の骨は、もう少し大きな子ども達や大人と違って厚みも薄く、柔らかです。それゆえに、向き癖や斜傾なのど影響で変形してしまうことが少なくありません。特に生後6ヶ月検診後の赤ちゃんでは頭部の変形がかなり極端なお子さんも見かけますが、頭の形に関しては、どのような体位で赤ちゃんを育てたのかはあまり関係なく、むしろ日本人としての民族的な特徴が影響していると考えられています。

また、赤ちゃんがはいはいやつかまり立ちを始めて、起きていることが多くなってくると、頭の形も次第に落ち着いてくることも確かですので、変形が強い場合でも長い目で見ていてくださいね。

というところで、今回はオシマイです。次回からは頭からオシリに飛んで、「おむつ」にまつわる話をしたいと思います。

いつも通り、この連載に関するご意見、ご質問、ご要望をお待ちしております!

(2001.08)
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