
●むくみの出る時期には個人差があるお友だちに相談された時、「妊娠中期からむくみが出るのは早すぎる、妊娠高血圧症候群なんじゃないの?」と言われたとのことですが、妊娠していなくても月経中になるとむくむ方もいるように、むくみには個人差があります。妊娠中期から出たからといって早すぎるということはありません。
●妊娠中はなぜむくみやすいの?むくみには、次の3つのポイントがあります。
1)血液が薄くなる(貧血だけではなく、血液タンパクの濃度も薄くなる)。
2)ホルモンの変化による(月経前になるとむくみっぽくなる人がいるほか、経口避妊薬=ピルをのんだり、ホルモン補充療法を受けるとむくみっぽくなる人がいる)。
3)妊娠子宮の圧迫による下半身のうっ血による(特に片方に強い下肢のむくみ)。
●むくみの症状このために、たとえば朝起きた時、手を握りにくくなり、少し手を動かしているとよくなることがあります。指輪が取れなくなり、リングカッターで切ってもらわなければならないこともあります。このように、むくみには個人差が大きいのです。
●妊娠高血圧症候群とむくみとの関係20年くらい前、妊娠高血圧症候群は日本では妊娠合併症として、妊産婦死亡や胎児・新生児死亡と密接な関係があったので、少しでも早く発見し重症の妊娠高血圧症候群にならないようにと注意されていたのです。その頃に比べると、どちらも4分の1に減っています。みんなが妊娠中の生活に注意するようになったからです。
そして妊娠高血圧症候群と関係のないむくみの原因が妊娠中にはある事も医学的にわかってきました。
●精密検査や入院が必要な基準は、血圧と尿タンパクそれではむくみは無視してもいいのでしょうか?いいえ違います!!!
妊娠高血圧症候群と関係のないむくみかどうかは調べておく必要があります。妊娠高血圧症候群は重症化すれば、やはりこわい病気なのです。
血圧が140/90以上ではないか、尿タンパクが(+)ではないかが診断根拠です。この2つが陽性なら『精密検査をしたり、安静と食事療法をしたり、時には入院治療』になります。
妊婦定期検診は、この『精密検査、安静と食事療法、入院治療』が必要かどうかを判断するための機会となるのです。
●外国と日本の妊婦検診の違いについて気がかりなことは、「手のむくみがあるのですが」と診察の時に尋ねてください。診察料を払っているのに、帰ってきてから心配するのはおかしくはありませんか?
産婦人科医として海外に視察や指導に行く機会もあるのでわかることなのですが、日本はどちらかというと「人(専門家)に管理してもらう」という傾向が強いようです。
妊娠中に15回も検診に通う国は日本以外にはあまりないようです。海外ではおおむね、むくみや体重の管理や、運動をどのくらいやるかなども自己管理です。しかし妊娠中に20キロも体重が増えると、医療者としてはなおさらお産や産後のことに気を遣わなければならないものなのですが…。
●日本と海外の違いを把握しておきたい「海外在住」とあるのでどちらの国かは分かりませんが、国によっては自己管理に任せるところもありますし、医療側に知識がないためほったらかしのところもあります。質問しないから知っているのだろうと思っているところもあります。昔から「郷に入っては郷に従え」と言いますがそのためには「郷」をよく知らなければなりません。
先生のプロフィール
聖母病院(東京都新宿区)勤務。いつも妊婦さんの気持ちを大切に、優しく、ときには厳しくコミュニケーションしている。「相手の立場に立った、わかりやすい相談」がモットー。妊娠・出産・育児に不安を感じる妊婦さんたちを、安心に導くかたわら、近年は妊娠からの食育の提案する活動(妊娠食育研究会)、メンタルヘルスの支援、高校生の性教育にも積極的に取り組んでいる。