ママが働く/働かないということは、基本的にはご本人やそのご夫婦・ご家族の「生活設計」や「夢・目標」などに関係するため、『(子どもを預けて)外で働くこと』と『いわゆる「専業主婦」として家事や育児に専念すること』のどちらか一方だけが正しいことはなく、それぞれにメリット・デメリットと感じられることがあります。
【働くママが考える「外で働くメリット」】
■家庭と職場、両方のバランスがとれているので、気分転換ができる。家計に余裕ができるので、子ども、自分たちの将来の選択肢が増える。 (31歳 神奈川県 1児のママ)
■子育てよりも短いスパンで達成感がある。自分の生活費を自分で稼げるから、いざとなったら他人に依存しないで生活できる。仕事でかかわる人が多いから、楽しいし、また自分のつくったものが社会で役に立っている喜びがある。いろいろなジャンルの知識や技術が自然に身につき(仕事に必要な具体的な知識から、プレゼン力、交渉術、処世術まで)、活かしていくことができる。一生懸命仕事をすると、多くの人から感謝されたり、ほめられることもあるので、やりがいがある。 (37歳 東京都 1児のママ)
■社会との接点や他人との交流を、より多く持つことができる。子どもと離れる時間があることで育児のことも思いつめず、冷静に考える時間が持てるのではないかと思います。 (32歳 大阪府 1児のママ)
■子どもを産んでしばらく仕事を休んでいたときに、一日中、誰とも話さず、外にも一歩も出ず、軽い育児ノイローゼ状態になってしまった。他人との関わりがいかに自分のバランスを保っているのかを実感した。子どもと離れて自分の時間を持つこともまた大切なことだと思う。 (37歳 兵庫県 2児のママ)
【働くママが考える「外で働くデメリット」】
■どうしても、子どものそばにいてあげられる時間が限られてしまうことや、成長の過程で初めてできたことなどの瞬間を目撃できないこともあると思います。 (32歳 大阪府 1児のママ)
■子どもとゆっくり接する時間がない。子どもにとってどうなのかと思う。朝など時間がない時にイライラして子どもにあたっている気がする。 (31歳 千葉県 1児のママ)
■子どもとかかわる時間が少ないことと、家事に割く時間が少ないこと。また、ママどうしの会話についていけなかったり、子どもを子育てサークルなどに連れていけないこと(平日昼間の開催が多いので)。 (30歳 奈良県 1児のママ)
■仕事のストレスで精神的な余裕がなくなることと、家事・育児の時間的余裕がなくなること、子どもを保育園に預けることに罪悪感を感じること。 (28歳 三重県 1児のママ)
【専業主婦の方が考える「専業主婦のメリット」】
■子どもの成長を一つ一つ理解しながら見届けられること、子どもとの信頼関係を築けていること。子どもと共に生活することで、子どもから教わったり自分自身を改めて見つめ直すことができること。 (32歳 東京都 1児のママ)
■家のことができるし、子どもの小さい時のことをつぶさに見ていられること。パートナーに「家に誰かいてくれる」という安心感を与えられること。 (30歳 愛知県 2児のママ)
■わずらわしい人間関係が少ない。子どもの成長を見届けることができる。外食が少ないので健康管理しやすい。 (29歳 福島県 1児のママ)
■自由に時間を使える。自分の好きなことができる。他人の目をあまり気にしなくてもよい。夫の帰宅を、家で明かりをつけて待っていられる。おいしい食事を作ろうという気持ちになる。 (28歳 福岡県 初産妊娠中)
【専業主婦の方が考える「専業主婦のデメリット」】
■どうしても世間から離れている感じがして、視野がせまくなったりしている気がします。また、一日中子どもと2人きりなので、結構つらいときもあります。 (35歳 千葉県 1児のママ)
■家事に手を抜けないので、24時間365日働きづめになる。そのわりに自分の自由になるお金がない。育児ばかりで、世の中から疎外されているような気分になる。人としてダメなように感じる。 (28歳 岐阜県 1児のママ)
■子どもとの対話がメインなので、大人として人と話すことが少ない。“自分自身”として、あまりつき合いができない(“○○ちゃんのママ”としてのつき合いになる)。 (34歳 東京都 2児のママ)
■社会との接点が少ないため刺激がほしくなる。自由になるお金が少ない。専業主婦だから、家事・育児は「やってあたりまえ」と思われる。 (29歳 福島県 1児のママ)
それぞれの立場にメリットもあればデメリットもあるので、とくにデメリットを痛感したときなどは、反対の立場の人をうらやましく思うこともあるようです。
【外で働くママが「専業主婦」をうらやましく思う理由】
■収入を得るためには、わずらわしいことや、いやな気分になることもとても多い。夫が元気で安定した収入があれば、専業主婦は気持ちがおだやかにすごせてよいと思う。 (41歳 北海道 1児のママ)
■自由な時間がうらやましい。家事も自分のペースでできそうなので。 (30歳 奈良県 1児のママ)
■子どもが保育園に行きたがらず「ママと一緒にいたい!」と言われる。子どもの体調が少々よくない時でも、家でゆっくり休ませてあげられない(熱があれば別ですが、多少の鼻水や咳ぐらいなら登園させざるをえないので)。 (34歳 神奈川県 2児のママ)
■出産してから「子どもとずっといたいな」と思うようになり、いつも一緒にいてあげられる専業主婦の方がうらやましくなりました。 (36歳 愛知県 1児のママ)
【専業主婦ママが「仕事をしている人」をうらやましく思う理由】
■育児に専念できるのはいいことだとは思うが、常に「~のママ」や「~の奥さん」と言う立場でしか言われない。このままでいいのだろうかという将来の不安は、いつまでもつきまとう。せっかく資格があるのにもったいない。 (37歳 愛知県 3児のママ)
■仕事との両立は大変だと思うけど、自分自身もメリハリのある生活ができるし、子どもも保育園等に行き、友だちとのかかわりや社会生活を身につけられる。 (33歳 京都府 1児のママ)
■子育てと家事の両立は想像以上に大変。共働きで正社員だった頃は、家にいられる専業主婦をうらやましく思っていましたが、幼児2人との生活は、毎日年末の大掃除が続いている感じで忙しく、手を抜けば自分が苦しくなるだけです。お金を払って子どもを他人に預け、仕事をして給料をもらう生活のほうが自分には向いていたとも思います。 (36歳 広島県 2児のママ)
■自分で自由に使えるお金がないと、せせこましくなってしまう・・・。また、家事や育児以外のことを考えられること自体が、最近はうらやましくなっています。 (35歳 千葉県 1児のママ)
ベビカムでは、働いているママ/働いていないママがどれくらいいるかや、それぞれの理由について、継続的にリサーチしています。
以前の調査結果と比較すると、働いている方のパーセンテージは30%(2007年6月)→38%(2008年4月)→39%(2009年8月・今回)と推移しており、中長期的に見れば、妊娠・育児期の女性が働き続けられる環境整備が少しずつ進展した結果ともみられます。
もっとも、働いているスタイル別に働く理由を比較すると、妊娠・育児期の女性が働くことの難しさの一端も垣間見られます。
正社員/職員として働いている方も、パートなどの方も、働く最大の理由は「生活に必要な収入を得るため」ですが、正社員/職員の方では『社会参加』や『自己実現』も働く理由でかなりのウェイトを占めているのに対し、パートなどの方ではそうした理由のウェイトがそれほど高くない状況、言い換えれば「(パートナーの収入だけでは不足する)生活に必要な収入のため働く」という側面がかなり目立つ状況です。
働いている方全体のパーセンテージが30%→38%→39%と推移する中で、正社員/職員のパーセンテージが14%→18%→23%と推移しています。2007年と比べて働くママが9%増えたといっても、(産休や育児休暇などの制度が整った一部の職場の)正社員/職員の方が増えただけで、パートなどで働く(働ける)方は増えていない状況です。
最近の厳しい経済情勢を受けて、パートなどで少しでも働いて収入を得たいという方が増えているのは、みなさんが実感したりマスコミなどで報じられているとおりです。
しかし、現在仕事をしていない方が仕事を見つけることは、かなり難しくなっている状況です。2008年4月には『希望の条件の仕事が見つからない』という事情が「働く意思があっても働いていない」という方の理由の25%でした。一方、今回の調査で現在働いていない方全体にその理由を伺ったところ、『家事や育児と両立できる仕事が見つからない』が40%です。設問の内容や集計方法が多少異なりますが、今回の結果を「働く意思がある方」限定で集計したとすれば、『仕事が見つからない』がさらに大きなパーセンテージになることは明らかです。
すなわち、働くママが増えていると言っても、制度的に恵まれた環境にある方とそうでない方の“格差”が広がっているとも言える状況です。
「正社員/職員」と「パートや専業主婦」という違いは、日本の公的年金制度における位置づけの違いでもあります(一般的に前者は第2号被保険者、後者は第3号被保険者)。
(その2)女性と年金制度では、そうした「女性の年金問題」についての意識などについて、レポートします。
★専業主婦とワーキングマザー
(その2)女性と年金制度
★関連リサーチ結果
VOL.37
ママの働く理由/働いていない理由は?<2008年版>(2008年4月調査)
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