赤ちゃん連れの外出では、何かと気を遣うことがたくさんあり、授乳のときぐらい、親子でリラックスしたいものです。
みなさんに、どういう場所に授乳室がほしいかを伺ったところ、『病院の待合室』、『新幹線・特急列車など長距離の電車・列車の車内』は、大半(95%)の方が挙げました。
病院は、待ち時間が長いことも多く、授乳室があると助かります。みなさんから寄せられたご意見のなかに、「ついたてひとつで授乳場所は確保できる」というものがありましたが、せめてついたてでもいいのでスペースがほしいところですね。
一方、『新幹線・長距離の特急列車』については、現状でも「多目的室」という授乳可能なスペースの設置はほぼ完了していますが、授乳室という名称でないこともあり、その存在はあまり知られていないようです(ベビカムが過去2回調査した結果でも、認知度は50%前後)。
※多目的室:列車内にある、障がい者の方、乗車中に急病や乗り物酔いで気分の悪くなった方の静養、赤ちゃん連れの方の授乳やおむつ替えなど、いろいろな目的で利用できる、座席2~3列分くらいの空間を壁で仕切った共同利用スペースのことで、車掌さんにお願いすれば、誰でも無料で利用できます(2009年6月現在、新幹線では九州新幹線以外のすべての新幹線に設置されています。また、JR在来線の特急でも、設置はかなり進んでいます)。
■自宅のある石川県と大阪の間を在来線の特急(JR西日本の「サンダーバード」)で往復することがあったのですが、車掌さんにお願いして多目的室を使えたので、授乳のときには助かりました。 (27歳 石川県 1児のママ)。
一方で、「多目的室」の認知ははそれなりに進んでおり、年末年始・お盆の時期・ゴールデンウィークなど、赤ちゃん連れが多数乗車する時期には、順番待ちなどで使えない場合も多いようです。
■新幹線で、多目的室の近くに指定席を予約しましたが、いつ見ても「使用中」。結局、座席で見えないように授乳しました。 (28歳 大阪府 1児のママ)
■新幹線で多目的室を借りて授乳する予定だったが、混雑していて車掌さんを見つけられず、2つ並びの洗面所を探して、そのうちの片方で、カーテンを閉めて立ったまま授乳した。 (32歳 宮城県 1児のママ)
そうしたスペースがもっと設置されればよいかもしれませんが、そうすれば座席数が減ります。多目的室で順番待ちが発生するのは、年末年始・お盆など1年のうちごくわずかな期間であり、年間トータルでみた多目的室の利用頻度と座席数との兼ね合いで、1つの列車に何ヶ所も設置できない事情があります。
帰省などの長距離移動のときに、授乳について「多目的室」を100%当てにしてしまうと、困ることも起こりがちです。以前にも述べましたが、授乳ケープなども用意しておくほうが安心なようです。
『病院』『新幹線など』に次いで授乳室が必要という答えが多かったのが、『飛行機(旅客機)の機内』。もっとも飛行機については、新幹線以上にスペースの制約が大きく、また、安全面から乗客は座席ベルトを装着して着席していることが望ましいので、専用の授乳室などは技術的に難しいようです。
空席がたくさんある時期なら、客室乗務員さんの配慮で誰も座っていない席に移動させてもらえる場合もあるようですが、空港では授乳室が設置されていることが多いので、搭乗前に授乳を済ませる、飛行中授乳せざるを得ない場合に備えて授乳ケープなどを用意するといった対応が必要ですね。
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『飛行機』に次いで、授乳室の設置要望が多かったのが、ホームやコンコースなどの駅の改札内、いわゆる『エキナカ』です。
もともと、『駅』の語源は、旅(移動)の途中に休憩などをした場所のことです。
陸上の交通手段が馬と徒歩しかなかった時代、長距離の移動で必須だった馬や旅人が休憩できるところは「宿駅(しゅくえき)」と呼ばれました。それが転じて、鉄道草創期の蒸気機関車の時代、機関車の石炭の補給や乗客の休憩のため途中で長時間停車した場所が「駅」と呼ばれるようになったのが、現代的な意味での「(鉄道の)駅」の起源と言われています。
駅=移動中の休憩場所という意味からは、赤ちゃんが電車で移動中、駅で授乳できても何ら不思議ではありませんが、今まではなぜか、駅で赤ちゃんに授乳することについては、ほとんど配慮されていない状況でした。
最近になってようやく、2.で示した「リフレスタ」のような施設が設置されたり、「もよりの駅には授乳室がある。京王線は比較的そうした取り組みに積極的なのでうれしい」(32歳 東京都 1児のママ)のように、授乳室などの整備に積極的な鉄道会社も見られるなど、駅で授乳できる環境も整備されつつあるようです。
もっとも不特定の人が出入りする場所では、管理や監視の目が行き届きにくい隔離スペース(個室的なところ)をむやみに設けることは、防犯面や衛生面で懸念があります。その点で、対象者の幅を広げて女性用の休憩所として整備する「リフレスタ」のようなスペースを設置していくのが、今後の方向性かもしれません。
■駅などは「授乳専用」のようにあまり使われない隔離スペースを作ると犯罪の場所にもなりうるし、不潔になりがちなので、「女性専用の休憩所」のように対象者の幅を広げるほうが、使うほうも安心して使用できる。 (35歳 東京都 1児のママ)
また、『日常的な外出』での授乳場所はどうでしょうか?
みなさんからは、「買物で外出したものの、おなかを空かせた赤ちゃんに大泣きされ、授乳できる場所がなかったため買物せずに引き返した」のような経験談が多数寄せられました。
■外出先で泣きわめかれ、目的を断念して帰ったことがある。 (40歳 広島県 4児のママ)
■母乳だけだった初めの頃、外出中に子どもが大泣きしたが、外で授乳することに抵抗があり、そのまま自宅に帰った。 (31歳 兵庫県 1児のママ)
■子どもがスーパーでぐずり始め、私の服のすそをめくり上げようとするのを制止していたら大泣きになってしまい、買物どころではなくなった。 (35歳 三重県 1児のママ)
■子どもがぐずってしまったのと、おっぱいが張り過ぎて帰宅するまで痛かったのとで、買物どころではなくなった。 (26歳 東京都 2児のママ)
■外出中、家に帰るまで授乳できなかったため、乳腺炎になりかけました・・・ (28歳 神奈川県 1児のママ)
こうした状況を改善するため、行政(地方自治体)が、地域の保育所・児童館・お店などを、授乳やおむつ替えができる『赤ちゃんの駅』として解放しています。
『赤ちゃんの駅』を最初に始めたのは東京都板橋区ですが、ほとんどお金をかけずにできるので、追随する自治体が増えています。みなさんから寄せられた声をみても、東京都江東区や荒川区、埼玉県春日部市や鶴ヶ島市、大阪府寝屋川市、福岡県北九州市や鞍手郡小竹町などでも実施されているようです。
また、商店街での授乳スペースとして『移動式の授乳・おむつ替え専用車両』が登場したりしています。
【わたしの町の支援策(「赤ちゃんの駅」以外)】
■私が住んでいる札幌市南区では、ママたちのグループがインターネットなどに授乳場所の情報提供をしてくれています。札幌市内の他の区の情報もいくつか載っているので、外出の際は参考にしていました。 (37歳 北海道札幌市南区 1児のママ)
■母子手帳をもらう際、授乳室の情報などが載った函館市が作った冊子をもらえました。 (29歳 北海道函館市 1児のママ)
■「みやぎっこ応援カード」というものが無料で配られていて、参加しているレストランなどでサービスがあったり、ミルク用のお湯がもらえたりする。 (33歳 宮城県仙台市 1児のママ)
■街中での「赤ちゃんマップ」があります。授乳室やエレベーターの位置などがわかるので、助かります。 (31歳 宮城県仙台市 2児のママ)
■隣の福島県郡山市では、授乳室やおむつ交換台がある店舗の紹介冊子ができている。 (39歳 福島県須賀川市 2児のママ)
■「子育てナビゲーション」という冊子をボランティアの方が作成しています。駅周辺のエレベーター・おむつ替えできる場所などのマークを添えて掲載しています。詳細な場所まではわかりませんが、どこに行けばあるかはわかるので、困ったときに駆け込むことができると思います。 (33歳 千葉県船橋市 2児のママ)
■代官山で、赤ちゃん用設備の地図「山マママップ」というのを配っていた。 (35歳 東京都目黒区 1児のママ)
■町田市には、「お出かけガイド」という冊子やWebでの案内があります。 (40歳 東京都町田市 1児のママ)
■横浜市内では、「
ハマハグ」という子育てサポートシステムに登録しているお店がある。登録証を見せれば特典が受けられたり、ミルク用のお湯をもらえたりする。 (41歳 神奈川県横浜市 1児のママ)
■横浜市の港北ニュータウンエリアでは、授乳やおむつ交換に困ったことはありません。すべての施設で充実した設備が整っています。 (29歳 神奈川県横浜市 1児のママ)
■施設数はまだまだ少ないですが、鎌倉市では授乳室やおむつ交換ができる場所のマップを配布している。 (37歳 神奈川県鎌倉市 1児のママ)
■隣の神奈川県大和市では、ミルク用のお湯を用意している大手量販店がいくつかあり、市の指導なのかも? と思う。 (38歳 神奈川県相模原市 1児のママ)
■隣の区になりますが、ベビーカー連れでも安心して店内に入れるように地域での取り組みがあります。具体的には、店頭に協賛店舗はステッカーを貼っていて、ベビーカーや小さい子ども連れでもどうぞということらしいです。 (28歳 兵庫県神戸市中央区 3児のママ)
■「ももっこカード」というものがあって、このカード(制度)に協賛しているお店では、ミルクのお湯をもらえたり、おむつ替えの場所提供や施設の割引等が受けられます。 (29歳 岡山県岡山市 1児のママ)
■「子育て応援いくちゃんサービス」というのがあります。「いくちゃんマーク」のあるお店では子ども連れに配慮した取り組みがなされているので、外出の際の参考になります。 (38歳 広島県広島市 2児のママ)
■徳島市の商店街の中にNPO法人が運営している施設があり、買い物の途中で授乳やおむつ交換を無料でさせてもらえたり、登録しておけば子どもを一時預かってもらえたりする。 (28歳 徳島県徳島市 1児のママ)
■諫早市では子育て支援施設などで授乳やおむつ交換などができるようになっているので便利。でも、午後4時で閉まってしまうので、もうちょっと開いていてもいいかなと思う。 (35歳 長崎県諌早市 1児のママ)
こうしてみると、外出先で授乳できる環境の整備について、各地でいろいろな取り組みがなされているようです。こうした取り組みがもっと進むよう、ベビカムでも、今後も多くのママたちの声を公表していきたいと考えています。
最後に「公共の場(外出先)での授乳環境」について、みなさんから寄せられたご意見の一部を紹介します。
【もっと整備してほしい!】
■外出先で必ずしも授乳できる場所があるわけではないので、やむを得ず公共の場で隠しながら授乳した経験があるが、かなり抵抗があった。今、少子化が取りざたされているが、公共トイレがあるように、育児しやすい環境の1つとして公共授乳室を設置してほしいです。 (41歳 福岡県 2児のママ)
■全国の市役所や、図書館などの公共の場所では、ぜひ授乳ができる場所を設けてほしい。そうすれば、よその町に行ったときも、万が一授乳する場所が見つからないときにどこに行けばよいかが分かるので、外出しやすい。(43歳 埼玉県 2児のママ)
■区役所は、出産後の手続き等で長い時間がかかることもあるので、授乳室があると時間を気にせず安心して利用できると思います。 (30歳 東京都 2児のママ)
■アンケートの設問にありましたが、銀行や役場など待ち時間が長い場所では、授乳室があると、小さな赤ちゃんがいる人でも安心して気軽に行けると思います。(32歳 千葉県 1児のママ)
■総合病院や小児科など、長時間(2時間超)待たなければいけないような所には、授乳室があるととても助かる。 (33歳 福岡県 2児のママ)
■近所のスーパーでは各階に授乳室があり、とても便利です。主婦にとって日常生活に欠かせないスーパーには、狭くてもよいので清潔感のある授乳室があるとうれしいです。 (35歳 東京都 2児のママ)
■子ども連れで買物に行きやすいよう、授乳室、おむつ交換台、子どもと一緒に入れるトイレ、子どもが遊べるスペースなど母親が出かけやすい環境を整えてほしい! 子どもと一緒だと商品を選ぶこともままならないのです。 (29歳 福島県 1児のママ)
■ファミレスに授乳室がほしい。ファミリーで利用するレストランなんだから必要だと思う。 (30歳 山口県 2児のママ)
【授乳室の室内環境にも配慮を!】
■授乳室にも、1つでいいのでベビーベッドがあればいいと思う。最初の頃はおかあさんも授乳準備に手間どってしまうので。 (28歳 北海道 1児のママ)
■授乳後に自分の服を整えたいので、個室の授乳室に赤ちゃんを寝かせられるベッドがあったらいいなと思う。 (29歳 兵庫県 1児のママ)
■最近できた授乳室はきれいで衛生的ですが、ちょっと薄暗かったりすると使う気が失せます。 (39歳 神奈川県 2児のママ)
■授乳室はどこでもそうだが、もっと冷房をきかせてほしい! 赤ちゃんが寒がりなのは(ほとんど外出しない)生後1ヶ月くらいまでで、それ以降は、赤ちゃんは汗っかきで、大人より体温も高い。自分も必死になって授乳しているうちに、親子とも汗だくになってしまう。もっと涼しくしてくれー! (34歳 静岡県 2児のママ)
■相部屋での授乳も悪くはないのですが、椅子が、部屋の中央に向かって壁際にずらーっと並べてあり、授乳するママたちみんなが目をあわせなくちゃならない配置だったのはやりづらかったです。 (34歳 岐阜県 2児のママ)
【授乳室、個室と大部屋のどちらがいい?】
■子どもの月齢が進んでくると、周りを気にしてなかなか飲んでくれなくなるので、大部屋タイプの授乳室より、個室(仕切り)があるほうがあげやすい。 (28歳 神奈川県 1児のママ)
■できれば、どこの施設も授乳室があるとうれしい。それも、大部屋で区切りがないものだと抵抗があるので、できれば簡単なカ-テンでもいいから、区切りがあるとさらにうれしい。 (23歳 東京都 1児のママ)
■百貨店の授乳室ですが、個室だと親子1組しか入れなく、何組も待っていることが多々ありました。人目に触れる場所でないので、数人入って授乳してもママたちは大丈夫じゃないかなと思います。赤ちゃんに泣かれると、そんなに気にする場合じゃないですから。 (31歳 東京都 1児のママ)
■授乳室があると思って行ってみると、個室が1つだけだったりして、使っている人がいるとずいぶん待たなければならない。個室でなくてもいいから複数人数で使用できるスペースがほしい。 (41歳 東京都 2児のママ)
【ミルクの人にも配慮を!】
■調乳の時、熱湯はあるが湯冷ましの水がなく、ミルクが冷めるまで時間がかかって、大変だった。熱湯と湯冷ましの両方を用意してもらえると助かる。 (37歳 大阪府 1児のママ)
■場所によってはミルク用に熱湯を出せる設備があって助かるが、温度が約80℃ととても高いので、さますための冷水をためてある桶や鍋のようなもの? があると助かります。ディズニーランドでは氷の入った鍋のような物が置かれていて、すぐに冷ませて良かったです。さすが夢の国です。 (29歳 東京都 1児のママ)
【その他の意見】
■デパートだと7階や8階にある授乳室。行くまでにぐずられて大変なんです。せめて2階までにお願いしたい。 (30歳 神奈川県 1児のママ)
■ついたてひとつで授乳場所は確保できると思います。希望者がいたら授乳室に早変わり・・・なんていう席を設けてもらえるだけでも助かります。何より、そうした準備をして下さるということは、授乳中のママを受け入れるつもりがあるということにつながるので、できるだけ多くの場所やお店に授乳できる環境が整備されると嬉しいです。 (37歳 北海道 1児のママ)
■デパートやレジャー施設では、だんだん授乳室は増えてきているように感じる。しかし駅構内、ホームなどにはほとんどないので、電車での外出はしにくいと思う。もっと当たり前に環境が整ってほしいと思う。 (32歳 千葉県 2児のママ)
■密室がかえってこわいこともあるので、設置場所などは考えてほしい。 (42歳 神奈川県 2児のママ)
★関連リサーチ結果
・外出先での授乳<2009年版>
(その1)授乳室が見つからないときの対応は?
・VOL.8
外出先での授乳、どうしてますか?<2007年版> (2007年7~8月調査)
・VOL.66
赤ちゃんと一緒の帰省や旅行 (2008年11月調査)
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