豚インフルエンザ由来の「新型インフルエンザ」の問題については、ようやく事態が沈静化の方向に向かいつつあるようです。
この問題の日本国内での状況については、政府・行政などの対応や、テレビを中心としたマスコミでの報道のされ方に『過剰(反応)』との声が少なくありません。海外、とくに多数の感染者や死者が報じられている北米にお住まいの方からも、次のような声が寄せられました。
【日本国内の反応は、過剰では】
■日本の政府や地域社会の反応が過剰すぎる。カナダに住んでいますが、日本と正反対で、ほとんど報道もされていないし、マスクをしている人もいない。マスクをしていると、逆に感染者かのように疑われて、嫌な顔をされる。日本との「マスクに対する認識の違い」を実感! (31歳 カナダ在住 1児のママ)
■すでにウイルスの型がわかっているのであれば、ワクチンの製造が可能なのだから、空港の検疫で感染が疑われた海外渡航者の隔離は過剰すぎると思うし、現に効果があまりないと分かったから、過剰な対応だったと思う。こちらでは、話題にすらなっていない。(42歳 アメリカ在住 2児のママ)
■周囲にかかった人はまったくいない。アメリカではマスクは医療関係者ぐらいしかつけないらしく、マスクをしている人もいない。 (38歳 アメリカ在住 1児のママ)
これには、海外、とくにアメリカなどとの感じ方の違いの背景には、医療制度・保険制度の違いなども無視できません。
今回の新型インフルエンザが最初に確認されたメキシコやアメリカでは、国民皆保険とも称される、日本のような「健康保険制度」がなく、医療機関の受診は日本でいうところの自由診療(自費負担)となっており、医療費や高額な民間医療保険の掛け金を払えない低所得の人が医療機関を受診しなかったため感染が拡大し、弱毒性にもかかわらず死者の発生につながった面もあります。アメリカ・カナダなどで「ほとんど話題にもなっていない」背景には、『(弱毒性であり、)きちんと医療機関で治療を受ければ治るのだから、恐れることはない』という意識も影響しているようです。
日本国内では、当初、強毒性の鳥インフルエンザを前提に立案されていた対策に従っていたため、多くの学校や幼稚園・保育園が休校・休園になったことなどは、結果的に過剰反応だったかもしれません。
もっとも、日本国内、特に兵庫県や大阪府での感染の広がり方は、基本的に特定の高校での学校生活で接触があった人たちの範囲で抑えることができたという点で、早めに大掛かりな休校・休園という対策を実施したことが、あながち過剰だとも言えません。
一方、すでにSARS(新型肺炎)や強毒性の鳥インフルエンザへの対応を経験している地域にお住まいの方からは、日本の対応は心配という声も寄せられています。
【日本の対応は心配】
■日本政府は、日本の空港に到着したとき熱があっても、簡易検査で陰性だと行動を制限しないが、後から新型インフルエンザだとわかっても遅いので、熱がある人は隔離してチェックするべきだと思う。こうした場合、香港政府は熱がある人は必ず空港からそのまま病院に行かせて隔離してチェックしているし、その人の近くに座っていた人も1週間隔離される。日本政府は危機感がなさすぎると思います。(45歳 香港在住 1児のママ)
いずれにせよ、国(厚生労働省)や地方自治体・保健所は、的確に情報を発信し、みんなが安心できる対策を実施してほしいものですね。
今回の新型インフルエンザは、現時点では弱毒性であること、タミフル・リレンザといった治療薬の効果があることはすでに報じられている通りで、基本的に、過度に恐れる必要はないと言えるでしょう。
ただし、今回のインフルエンザも、すでに知られているAソ連型・A香港型などの季節性のインフルエンザも、糖尿病やぜんそくなどの持病を抱えている人や妊婦などでは重症化しやすいため、治療可能だからと言って感染拡大は放置できません。それ以上に、みなさんもご存じの通り、誰も免疫を持っていない「新型」ウイルスであるがゆえに感染しやすく、人から人への感染を繰り返すうちにウイルスの変異により強毒化する可能性があるため、世界中が感染拡大の阻止に全力を挙げています(実際に、1918年~19年にかけて流行した「スペインかぜ」も、当初は弱毒性インフルエンザだったものの、当時の医療では感染拡大を阻止できなかったため、人から人への感染を繰り返すうちに強毒化し、半年後に大流行した際に全世界で何千万人もの死者を出しています)。
感染防止のうえでは、もちろん「ワクチンの予防接種」が最重要です。今回の新型インフルエンザについても、この冬の北半球でのインフルエンザ流行期に間に合わせるべく、すでにワクチン開発の準備が進められていますが、それとともに、インフルエンザに限らず感染症の予防の上では、やはり一人ひとりの日常の対策もまた、重要ですね。
「こまめで入念な手洗い」「うがい」はもちろん重要ですが、十分な栄養や睡眠をとることで抵抗力をつけることもまた、大切なようです。
海外旅行から日本に帰国して新型インフルエンザを発症した人の事例でも、帰国便の飛行機内で発症した人と隣接した席に座っていたため「濃厚接触者」として隔離された人たちからの発症(機内感染)は、今のところ報じられていません。十分に抵抗力のある健康体の人なら、たとえ飛行機の中で十数時間も感染者と近接していても、感染するもの(もしくは、感染しても発症に至るもの)ではないことがうかがえます。やはり、日常の生活習慣が、健康な毎日を過ごし病気に強い体を作るうえでは重要ということのようですね。
もし、みなさん自身や家族に「新型インフルエンザ」への感染が疑われる発熱などの症状があらわれたときには・・・、こちらもすでに報じられている通り、まず「発熱相談センター」に電話連絡をして、センターの指示に従って指定された「発熱外来のある医療機関」を受診する、一般の医療機関を受診する等の対応をしなければなりません(個人の判断で勝手に一般の医療機関に行ってしまうと、もし本当に感染していた場合、待合室などで他の人にうつしてしまい、感染が広がる可能性があるからです)。
いずれにせよ、新型インフルエンザに対しては、正確な情報や知識に基づいて、冷静な対応を心がけたいものです。
最後に、皆さんから寄せられたご意見などの一部を紹介します。
【「マスク」にひとこと!】
■マスクの予防効果は低いのに売り切れになっていて驚いた。インフルエンザだけでなく病気は常にまん延しているので、基本的な予防をしていればいいのではないかと思う。かかった人、その周囲にいた人が、どう対応するかをもっと重要視するべき。(33歳 東京都 2児のママ)
■マスクの売り切れ続出。ネットでは値段が跳ね上がっていたりで、過剰反応だと思う。本当にかかっている人にマスクが行き渡らなくなったら意味がないのに! (29歳 兵庫県 1児のママ)
■健康な人がマスクを買い求め、マスクが品切れになるのはどうかと思います。それよりも、感染した人がマスクを買えなくて、マスクをつけずに感染を広めてしまう方が問題だと思います。(29歳 東京都 1児のママ)
■関東で感染者が確認された時には、すでにドラッグストアでもホームセンターでもマスクが売り切れてしまいました。今後、首都圏でも感染が拡大した時に、「予防」の人よりも「感染した人」がマスクをするべきなのに、マスクが入手できないことが不安です。(34歳 山梨県 2児のママ)
■効果がないのに健康な人がマスクを買い占めて、実際に感染した時にマスクが手に入らないのではないか。皆がマスク姿なので、誰が感染者かわからないし不気味。(39歳 兵庫県 1児のママ)
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マスクは、感染してしまった(可能性のある)人が、咳やくしゃみで他の人にうつさないためには有効な対策ですが、感染予防という点での効果は限られています(「マスク着用」だけで、どんな状況でも自分の感染を予防できるということではありません)。
■マスクをしていてもあまり予防にならないらしいが、マスゾエさん(枡添厚生労働大臣)はマスクの着用を勧めていたりして、何がホントで何がウソなのかよくわからない。(34歳 兵庫県 2児のママ)
■マスクをしたくても、マスクを買えなければできませんよね。そんな人もいると思います。マスクの品切れ状態や、価格の高騰は異常に思います。外国では、マスクを配布している光景を見ましたが、日本ではしていません。簡易的なマスクだとしても、国をあげて早急に作って配布したらいいのにと思います。なんか、のんびりしすぎているし、肝心な時には何もできない国だな~と思ってしまいます。(35歳 東京都 初産妊娠中)
【日常生活への影響】
■市の公共施設(図書館や児童館、公民館)が1週間休館になったため、子育てイベントやサークルが中止または延期になった。(31歳 兵庫県 1児のママ)
■現在妊娠中ですが、マザースクールが延期になりました。(30歳 兵庫県 2人目妊娠中の1児のママ)
■学校関係が1週間休校になったり、主人の職場では営業活動の縮小や検温が義務づけられた。近くのスーパーでは、入り口に消毒液が置いてあり、コンビニやスーパー、お店の人たちはほとんどマスク姿になった。(35歳 大阪府 初産妊娠中)
■産婦人科・小児科で働いていますが、発熱や風邪の症状がある場合、受診を控えてもらい保健所の指示を患者さんに仰いでもらっています。基本的に面会時間の制限や面会者の制限、マスクの持参、手指の消毒などを実施しています。(33歳 岡山県 初産妊娠中)
【マスコミの報道にひとこと!】
■マスコミが騒ぎ過ぎ。国民をさらにパニックにさせているだけ。注意を促すのはいいことだが、もっと冷静に報道すべきだと思う。(23歳 埼玉県 1児のママ)
■もっと正確な情報と対応策を広く知らせるべき! (37歳 東京都 1児のママ)
■過剰に反応せざるを得ない状況はある。少し冷静に対応ができるように、国も情報提供をこまめにしているが、それもどこまでするのがいいのか疑問である。マスメディアはもう少し的確で役立つ内容を発信してほしい。(33歳 山口県 2児のママ)
■季節性のものと変わらず、弱毒性だから大丈夫、というわりには、マスコミが連日騒ぎすぎのような気がする。逆に、持病のある人や妊婦がかかると重症化する可能性もあるという点は、しっかり報道してほしい。(37歳 神奈川県 初産妊娠中)
【問題意識の乏しい人たちが心配】
■やはり、1週間の休園や学校閉鎖にもかかわらず、子どもたちが平気で遊びまわってる姿が目撃されたこと。遊ぶための休みではないのに、親もどうかしていると思う。感染が学生中心に広まったのは、そういう常識のない行動の結果だと思いました。(31歳 兵庫県 3児のママ)
■これほど問題になっていても「これくらい」とか「多分自分はかからないと思う」みたいな考えの人が少なくないことにイライラしました。普通に高校生が出歩いているし、「休校措置」の重要性が全然わかっていない感じがしました。もっと状況を理解する力がないのかと、悲しくなりました。(31歳 兵庫県 1児のママ)
■学校が1週間休校、自宅待機になっているのに、出歩いている若者を見ると、不安になる。暇なのは分かるけど・・・。私は妊娠中ということもあり、極力外出は控えているが、仕方なく買い物に出かけなければならないこともあり、マスクもしていない若者を見ると不安になった。(39歳 大阪府 初産妊娠中)
■休校になったにもかかわらず、子どもたち(小さい子も含む)が外でマスクもせず遊んでいた。母親たちもマスクもせずにおしゃべり。自分勝手な人が多くてびっくり。他人にうつさないためにもマナーは守るべきだと思った。(34歳 兵庫県 1児のママ)
■みんな軽く考えすぎ。パニックになる必要はないが、いくら毒性が弱いとはいえ、えたいの知れないウイルスに対してもう少し慎重になるべき。(33歳 埼玉県 2児のママ)
■学校の先生など、手洗いやマスクの装着方法や消毒方法がきちんとできていない人が多いです。学生にきちんと指導できているのでしょうか。成田で感染が発覚した高校生が、アメリカでマスクをしていなかったのはまずかったなと思います(ちなみに私は医療関係者です)。 (31歳 北海道 初産妊娠中)
【騒動の思わぬ効果】
■マスコミは騒ぎすぎだと思うが、子どもに手洗いの習慣をつけさせられたことはよかったと思う。(33歳 東京都 1児のママ)
■一気に日本国内で広がったことに驚いています。やはり、うがいと手洗いは大切ですね。くしゃみやせきに敏感になりました。自身がするときにはハンカチをあてて飛散しないように気をつけています。(35歳 新潟県 1児のママ)
■いろいろな反応が過剰だと思う反面、予防が徹底されるのはいいことだと思います。小さい子どもの予防法がこれといってなく、人ごみを避けるぐらいしかできませんでした。非常時の備えをしなくてはいけないのは、頭ではわかっていてもなかなかできていないのが現状。非常用のものがセットで揃うなら、購入も検討しなくてはと考えています。(27歳 大阪府 1児のママ)
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