ちょうど2009年6月3日、厚生労働省から「平成20年人口動態月報年計(概数)の概況」が公表されました。
それによれば、合計特殊出生率(1人の女性が、生涯の間に産む子どもの人数)は、平成17年から平成20年にかけて1.26→1.32→1.34→1.37と推移し、3年連続で上昇しました。
もっともこれは、子どもを産むことができる年齢の女性の人口が減り続けているため、数値が大きくなった「統計のからくり」の面があり、出生数(その年に生まれた子どもの人数)そのものの長期的な減少傾向は変わっていないと報じられています(平成19年から20年にかけての出生数の増加は、「うるう年で1日多かったこと」や「当時の景気回復傾向」の影響と説明されています)。
人口動態の推移からは、このほかにも興味深い集計結果が報じられました。
たとえば、『第3子以上』として生まれた子どもの比率が、4年連続で大きくなっています。
※出生順位:その子が、何人目の子として生まれたか
すなわち、1人目または2人目として生まれる赤ちゃんより、すでに2人(以上)子どもがいる方の3人目(以降)として生まれる赤ちゃんが、相対的に年々増えているという状況です。
今回のリサーチ結果では、もし制約がなければ『理想の子どもの人数は3人以上』と考える方が、全体の約4分の3です。もっとも、この理想も、みなさんのライフステージが『初めての妊娠→第1子の出産から育児期へ→第2子の妊娠→・・・』と進むなかで、少しずつ変化しています。
初めてのお子さんを妊娠中の時点では、『理想の子どもの人数は3人以上』と考える方が8割近くに達しています。
しかし、初めてのお子さんが生まれて第1子の子育て中になると、『理想の子どもの人数は3人以上』と考える方は約6割にとどまり、『子どもの人数は2人まで』と言う方が4割近くになります。慣れない子育てに追われて、「1人でもたいへんなのに、3人なんて難しい」という気持ちなのでしょうか。
そんな状況のなか、実際に2人目のお子さんを授かると、『理想の子どもの人数は3人以上』と考える方は8割を超えます。すなわち、「あと1人(以上)子どもがほしい」と思う方が圧倒的に多数です。育児について、それなりに「慣れ」や「気持ちのゆとり」が生まれるため、「もっと子どもがほしい」と思えるようになるのかもしれません
ところが、お子さんが2人以上の方で、具体的に「子どもをもちたい」と思う方は少数です。「経済的な問題」を筆頭に、「自身の年齢」「自身の体調・体力」「仕事との両立」「住宅事情」などさまざまな理由で、理想どおりとはいかないようです。
一方、実際に子育て中の方では、子どもの人数が1人→2人→3人以上と増えるにつれて、理想と思う子どもの人数も大きくなっています。特に、お子さんが3人以上の方では、子どもが4人、5人といった大家族を理想とする方が過半数です。
すなわち、『子どもが多い人ほど、さらに子どもがほしい』と思う傾向が強くなっており、人口動態統計の変化に現われた『第3子以上の相対的な増加』の傾向と一致します。
こうして見ると、少子化を食い止める一案として、(慣れない初めての子育て中でも、)「1人でもたいへんなのに、3人なんて難しい」という気持ちにならないような対策が必要ということになるのでしょう。
もっとも、「(子育てが)たいへん」と思う理由は百人百様です。
産科不足で、分娩予約できる施設探しに苦労した方は、「こんなに病院探しで苦労するのなら、妊娠なんてしなければよかった。もう二度と子どもは産まない!」と、育児生活以前の問題を指摘します。
ようやく出産しても、例えば仕事をお持ちの方の場合、「ものすごく苦労してようやく保育園に入れられたが、こんなに苦労するならもう子どもは産みたくない!」と、待機児童の問題を指摘します。
もちろん、そうした問題と、各家庭の経済的な問題、年齢、住宅事情、家族関係など、「たいへん」と思う理由が複雑にからんでいる場合も少なくありません。
ところが、国や地方自治体などの少子化対策は、例えば産科の問題がクローズアップされれば「妊婦健診費用補助の増額」など、ともすれば単発的で、複雑にからんだ問題を総合的に解消する方向で推進されているとは、必ずしもいえない状況です。
ベビカムでは、引き続き『実際に妊娠中・育児中のママたちの声』を、社会に対して発信していきたいと思います。
最後に、みなさんから寄せられたさまざまなご意見の一部を紹介します。
【もっと子どもをほしいと思う理由】
■子どもが好きだから。今、娘がすごくかわいくて、子育てが楽しいから。(21歳 愛知県 1児のママ)
■自分が弟・妹と合わせて3人で育って、それが普通だと思っていたので、「できれば子どもは3人が楽しいかな?」と単純な理由です。(33歳 福岡県 2児のママ)
■第2子を流産してしまいました。どうしてもまた、自分の新生児をこの手で抱きたいです。リスクはあるだろうけど、この試練を乗り越えて強い母になり、3人の子の親になりたいです。(32歳 千葉県 1児のママ)
■子育てはかなり大変だけどかわいい。赤ちゃんの感じがたまらないので、何度も味わいたい! 赤ちゃんを見ているだけで温かい気持ちになれる。(25歳 山形県 1児のママ)
■3人子どもがいたほうが楽しいと思うから。「男の子と女の子を授かったので、もういいでしょう?」と周りからは言われるけど、子どもはたくさんいたほうが楽しいと思います。(35歳 兵庫県 2児のママ)
■あまり大家族も困るけど、兄弟姉妹が3人から4人くらいいると大勢で楽しそうと思うから。自分が小さい頃、3人、4人の兄弟姉妹がいる友人が羨ましかったから。(35歳 愛知県 2児のママ)
■1人っ子ではかわいそう。兄弟姉妹が多いほうが、思いやりとか協調性とかを養えるだろうから。親の老後の問題を、1人で抱えこませるのも大変。(35歳 東京都 1児のママ)
■子育ては大変だけど、何度となく感動させられたりハッとさせられたり、人生の意味を知る良い機会。お金はかかるけど、自分の人生にとってもこれ以上の宝はないと思うから。(30歳 茨城県 2人目妊娠中のママ)
■夫婦とも子どもと接する職業であり、もともと子どもは大好きなので、これからも子どもがほしいです。現在育児中ですが、かわいいし、楽しいし、苦しいことがあっても子どもの笑顔を見て乗り越えられるるのは、生きがいだからです! (27歳 北海道 1児のママ)
【(これ以上)子どもをもつのは無理かもしれないとあきらめる理由】
■3人目が生まれれば私は子育てに専念せざるを得ないと思う。今の旦那の給料だけでは生活ができない! 3人を親に預けて働くのも現実的ではないし。(35歳 宮城県 2児のママ)
■去年まではもう1人くらい欲しいと思っていたのですが、今年の不景気で収入が減ったので、経済的に厳しくなってしまいました。(34歳 京都府 2児のママ)
■子どもはかわいい。どんな子どもが生まれてくるのだろうかと、楽しみ。こんな幸せなことはない。子どもがたくさんいれば面白いだろうと思う。でもお金が一番かかる。経済的問題が解決すればあと1人は生みたいと思う。(33歳 千葉県 2児のママ)
■主人の帰りが遅いので、子育てを1人でしなければならない。また、経済的に無理です。(33歳 神奈川県 2児のママ)
■パートナーの仕事が忙しく、ほとんど育児に協力を求められる状態でないため。私1人で3人を育児するのは精神的にも体力的にも正直厳しい。(36歳 福岡県 2児のママ)
■自分の年齢や、これからの経済的なことを考えて子どもは増やさないと言う旦那。生まれた時から今まで、何ひとつ育児に協力したこともないのに、産んで育てるのは私なんだぞー! それから、将来の経済のことばかり考えていたら、いつの時代だって子どもなんか産めないよ! それより、いま目の前にいる息子に弟か妹をつくってあげること考えろー! あぁスッキリ。こんなところで失礼しました。(26歳 宮城県 1児のママ)
■最近の防犯事情を考えると、私1人で2人以上の子どもを連れ歩いて守りきれるか、自信がない。(35歳 愛知県 2児のママ)
■自分でやりたいことがあるので、残りの人生を考えたら、子どもはおなかの子1人で十分かな? と思っています。(35歳 神奈川県 初産妊娠中)
■夫婦ともに実家が遠い。知り合いのない土地で子育てしていると、子どもはかわいいが、不安や悲しみが常にある。いざという時や、ちょっとした時に気軽に子どもをみてもらえないのは やはりとても大変。(32歳 埼玉県 2児のママ)
■育児休暇を取得できず、産後2ヶ月で復帰を余儀なくされているのが現状。保育所が激戦区で入所が困難なため、上の子2人は超計画出産で1月に産んで4月に保育所入所を強いられました。さらに、2ヶ月で職場に復帰する体調管理の難しさ。どう考えても、子どもは2人が限界。(37歳 兵庫県 2児のママ)
【私の考える「少子化の理由」】
■妊娠して気づいたのは、世間、社会は妊娠中・子育て中の女性が働くことに対して、かなり状況が厳しいということ。あと、お金がものすごくかかるということ。(29歳 愛知県 初産妊娠中)
■働く女性に対して世間的にはまだまだハードルが高く、女性が頑張れば頑張るほど婚期が遅くなる。結婚・出産などについても理解や補助が十分でないため、出産率の低下が起こってしまう。(37歳 大分県 1児のママ)
■不況、犯罪などの多い社会や環境問題などで将来への不安がふくらんでいること、尊敬できる・憧れる子育て世代のモデルが不在なことと、晩婚化。(26歳 東京都 1児のママ)
■年金の崩壊や回復の兆しがまったく見えない不景気など、経済の先行きの不安定さが明らかに見えていて、生活の安定が保障されていないから。また、昔に比べて男女問わず、人生の中で多くの選択肢があり、結婚をして家族を持つことが「幸せ」の代名詞でなくなったこと。(35歳 神奈川県 初産妊娠中)
■旦那1人の収入では家族を養いきれず、母親が育児に専念できない。母親が働こうにも、保育園が確保できない。不妊治療に対して、国や職場の理解や支援がなく、経済的負担からあきらめる人も多い。(29歳 岡山県 1児のママ)
■若い人たちが、安定した職業につけなくて結婚どころではない現状と、今、正社員で家族を支えている人たちでもお給料が以前ほどもらえなかったりで、生活が苦しいことが考えられると思います。(29歳 兵庫県 2人目妊娠中のママ)
■子育てが経済的・精神的に余裕を持ってできるような社会環境になく、男性がまだまだ育児休業を取ったり、家事を分担したりするような成熟した考えをもった存在でもない。また、そのような成熟した社会でもないから。(39歳 大阪府 初産妊娠中)
■多くのことが重なってのこと。また、昔の「産めよ増やせよ」の頃とは時代が違い、産めばなんとかなるような時代ではないし、たくさん産めばいいわけでもない。ある意味、少子化になって当然。また、多く産んで子育てのもろもろが適当になるのもいかがなものかと思う。(38歳 東京都 1児のママ)
■昔は、子どもを小さい頃から働き手としてみており、必要な人材だった。今は、子どもは子どものことをし、大人は子どもに過度な期待をするあまり、金銭的に苦しくなる。だから、結局子どもの人数は少なく、その分、少ない子に期待してお金をかけるため少子化が進む。(33歳 山口県 2児のママ)
■少子化の原因について、今いろんなことが言われています。環境が悪い、経済的問題、補助金が少ない、病院がない等々。私もその中の1人です。だけど、よぉーく考えてみれば、産み育てる自分たち自身が原因なのでは? 昔の人は、今の人たちみたいにあれこれ悪いことを考えず産んでいましたから。(35歳 神奈川県 1児のママ)
■いわゆる適齢期に結婚して子どもがいる人は、たいてい2人以上産んでいる。晩婚化で1人しか産めない人や不妊も多い。(32歳 愛知県 2児のママ)
■周りには「できることならもう1人欲しいな~」というお母さんがたくさんいます。でも経済的な不安、周囲に育児を手助けしてくれる人がいないなどの障害が、その実現をジャマしているようです。(33歳 北海道 2児のママ)
■国の政策は、「女性が働けるように」と言っているけど、仕事のない田舎では、経済的に余裕があったら、働かずに子どもが帰ってきた時に家にいてあげたいという人がほとんどです。(31歳 三重県 3児のママ)
■ずっと東京で生まれ育って、短大を卒業してから働いていますが、通勤電車のストレスはとてもひどく、流産の経験もあります。田舎でのんびり結婚していたら、もっと早く子どもを授かっていたかもと思います。他人を思いやる優しい社会にならないと、女性は子どもを産み育てる希望を持てないのではないでしょうか。(38歳 千葉県 初産妊娠中)
■子育てをしていくうえでさまざまな問題があり、少子化の原因は1つではありません。子どもを産む時だけ援助されても、育てるのにもお金がかかります。産む施設の問題、産科救急の問題、子どもの医療の問題、子どもがいても働きやすい環境・制度など・・・。国が対策だと思っているのは、子育てのほんの短い期間だけのことなんじゃないでしょうか? (39歳 神奈川県 3児のママ)
【私の考える「少子化対策」】
■子どもが3人いると、びっくりするほど貧乏です。3人目の子どもにかかるすべてのお金を援助します! となると、ほんとに理想的! (32歳 茨城県 3児のママ)
■3人目以上を生むことでメリットがあれば、当然たくさん産む人が増える! 例えば3人目以上の子どもの養育費・教育費・医療費などがほとんどかからないというようにしてほしい。その子たちが成人したら、税金を払ってくれるのだから。(38歳 大阪府 2児のママ)
■児童手当がどうとか給付金がどうとかの問題ではなく、パパがサービス残業をしている実態などを理解してほしい。サービス残業をなくし、毎日定時に帰れてパパの収入だけで生活していけるようにしてほしいです。(31歳 埼玉県 1児のママ)
■意識改革。「好きで子どもを産んだくせに、子どもがいるだけでお金がもらえる“児童手当”はおかしい、育児はたいへんだとか言うな。子どもがうるさい」などと言われると、本当にへこみます。みんな昔は子どもだったのに、自分が大切にされてきたことや、子育ての大変さや大切さを知らない人が多いと思います。子育ては大変だけど尊いということを、改めてきちんと伝えないといけない時代なのかなあ・・・と思います(別に、子どもを産むことがいちばん大切だとか、産んでない女性は価値がないと言っているわけではありません)。 (31歳 群馬県 1児のママ)
■仕事もしたい、子どももほしいではなく、やるべきことがその時々であると思うので、意識改革をするしかないと思う。男女にはそれぞれの役割があることを、女性が忘れてしまっているようにも思う。(26歳 宮城県 1児のママ)
■家族をもつことのすばらしさを社会的に認知して広めて行く。一方で、子どもをもたない人の生き方も尊重する。つまり、「自分はどう生きたいか」を、学生時代から考える機会を作ってあげたらいいと思います。(36歳 ドイツ在住 初産妊娠中)
■子育ての楽しさをアピールする。子どもは大人の思うようにはならない、ということを保健教育などで知識としてきちんと教える。世の中が、子どもを持つ親に優しくなる。(42歳 埼玉県 1児のママ)
■女性が働くということが「カッコイイ」というイメージが現代人に広く浸透しているのと同じくらいに、子育てすることが「カッコイイ」というか、生きがいを感じられるものであるということがちゃんと伝わり、若い世代がそう思ってくれること。(27歳 東京都 2人目妊娠中のママ)
■今ある子育て支援の徹底。子どもがほしくない人は、どんな対策があろうと産まない。子どもがほしい人は、不妊治療に通ってでもほしい。本当に産みたい! っていう20代、30代の人にもっと経済的な支援を。(32歳 京都府 1児のママ)
■出産した家庭への少額の補助金などではなく、保育園をたくさん用意して待機児童が100%いなくなることを優先してほしい。お役所は、今後ますます児童が減ることを心配して保育施設を増やすことをためらっているが(実際に、区役所からは「10年後には児童が減るので、そう簡単に施設を増やせない」と言われた)、実はそのせいで出産をためらって、子どもが減っていることを分かっていない。今ちゃんと保育施設を増やせば、今後も子どもは減らないだろうと思うし、保育施設もずっと使用できる。(38歳 東京都 1児のママ)
■特に安全面で、世の中がもう少し子育てしやすい環境になること。知り合いでも、「今後のことを考えると、子どもが幸せになるとは思わないから、子どもを持たない」という人がかなり多くいる。また、子育てする女性の負担が、肉体的にも精神的にも大きすぎる。もう少し軽減できないだろうか。(38歳 栃木県 3児のママ)
■周りには子どもが3人以上のご家庭がいくつもあり、産める状態の人が産んでいないという感じはあまりしない。親との同居が減り、核家族で子育てに不安を感じる人も多いだろうし、私は自分と夫の体調が思わしくなかったので働いてはいないが、積極的に保育園の一時預かりなどを利用して今までやってきた。たとえ身内でなくとも人の手を借りて、ゆったり育てていこうという風潮が広まれば、もっとみんなあれこれ心配せずに子どもを産めると思う。そういったサポートの周知が必要。(38歳 岡山県 1児のママ)
★関連リサーチ結果
・VOL.25-1
産科不足調査 (その1)出産できる場所が選べない?(2007年11~12月調査)
・VOL.77
保育園が足りない!(2009年2~3月調査)
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