2010年の春以降、東京都文京区の成沢広修区長(44)、長野県佐久市の柳田清二市長(40)、三重県伊勢市の鈴木健一市長(34)、広島県の湯崎英彦知事(45)、大阪府箕面市の倉田哲郎市長(36)など、自治体のトップ(首長)が自ら『育児休暇の取得』を宣言し、実際に公務を休んだり短縮したりしています。
一方、こうした動き(自治体のトップが「男性の育児休暇取得」を率先すること)が相次ぐ現状に、自身も7人の子どもの父親である橋下徹大阪府知事(41)は、「男性が育児休暇を取ることのきっかけや問題提起として、自治体の首長が率先して育児休暇を取得すると言っているが、休みが取りづらい世間の現状を知らなすぎる、政治や行政は、まず休みを取りやすい環境を作るべきであり、(世間一般の人が十分に休みを取れる環境になってから)首長は育休を取るべきだ」という趣旨の発言をして疑問を呈しています。
また、育児に積極的に向き合う男性(父親)を指す「イクメン」という言葉も広まり、テレビ・新聞などマスメディアにおいて実際に育児休暇を取得している男性について頻繁に取り上げられるなど、『男性の育児休暇(取得)』が昨今何かと話題になっています。
そこで今回は、2007年7月、2009年7月に引き続き、「パパの育児休暇」についてリサーチしました。
まず、みなさんのパートナーの勤め先に『(男性の)育児休暇制度』があるかどうかについてですが、「ない」というお答えのパーセンテージは継続的に低下しています。
昨年(2009年)から今年にかけては、「ある」のパーセンテージが少し低下し、「わからない」が増加していますが、これには、以下のように非正規雇用も少なくない最近の雇用情勢の影響も考えられるので、総合的に見て、正規雇用の男性に対する育児休暇制度は、着実に普及しているようですす。
■夫は派遣社員なので、(育休取得は)できない。 (30歳 東京都 2児のママ・匿名希望)
■現在の職場では、雇用形態がアルバイトということもあり、育児休暇という形では取れないと思います。 (35歳 大阪府 1児のママ・happyさん)
しかし、制度が徐々に普及していても、実際に男性が育児休暇を取れる状況かと言えば、現実はなかなか厳しいようです。
実際に育児休暇を取得した男性(パパ)のパーセンテージは、2007年→2009年では上昇しましたが、2009年→今年は低下しています。
もっとも、雇用や経済情勢が依然として厳しい中、今回の調査で『今後、育児休暇を取る男性が増えると思うか』や『自治体のトップが率先することは、男性の育児休暇取得の促進・普及につながると思うか』の問いに対しては、「はい(そう思う)」と答えた方が過半数となりました。
「世間一般への問題提起」という側面から見れば、自治体のトップが率先して育休を取得することは、多少なりともプラスになったようです。
最後にみなさんから寄せられた様々な意見の一部をご紹介します。
●育児休暇を取る男性は増えると思う?
【いいえ】
■有給休暇ですら取るのに周りの目を気にして使えないのに、育児休暇などはとても難しいと思う。 (38歳 東京都 1児のママ・pichan-1さん)
■普通の会社は育休を取ると仕事が回らなくなるし、復職しにくくなるはず。会社イメージを上げるためのパフォーマンスに感じる。母親がしっかりするべき! (34歳 広島県 3児のママ・さくらさん)
■男性が育児に参加すべきという考え方は高まってきているが、不況続きなので、大企業や理解がある職場ならともかく、中小企業や保守的な考え方の地域に勤めている男性は、育児休暇を取ると職場に居づらくなる方もいるのではないかと思う。 (30歳 岐阜県 2児のママ・こはるっこさん)
■社会が取得の方向へなかなか進まないと思うから。今の上司世代は「育児休暇を取るなんて、もってのほか!」の世代。この世代が引退しないことには進まないと思う。 (31歳 熊本県 2児のママ・ぱんださん)
■女性の育休取得制度でさえ定着して20年弱で、それでも取りにくい環境にある人もいる中、まだまだ男性の育休取得は理解されにくいし、女性より男性の方が責任ある立場にある場合が多く、一定期間業務を離れるのは難しいと思う。 (35歳 東京都 妊娠中・べすさん)
■多少は増えるだろうが、世の中で奨励しているほど増えないと思う。何故なら、女性は妊娠するとだんだんおなかが大きくなって、周りも近いうちに産休に入ると思って仕事を進めるが、男性は早くから育児休暇を取ると伝えていても実際におなかが大きくなるわけではないので、周囲にも本人にも実感がない。 (45歳 神奈川県 1児のママ・茶々さん)
【はい】
■最近、「イクメン」など育児をすることが男性にも魅力的、必要という風潮が生まれつつあるからです。 (25歳 大阪府 1児のママ・aomshiさん)
■男性もどんどん家事や育児に関わっていくと思うし、このご時世、女性より女性らしい人も多いので(笑)。 (30歳 大阪府 1児のママ・ゆこさん)
■少しずつながらも、人々の意識の中に男性の育児休暇も根づいてきていると思う。働く女性も多くなり、子どもの数が減っている今、みんなで子育てをするという環境が整うことを願うばかり。 (35歳 滋賀県 2児のママ・pu-koさん)
■今後不景気の影響もあり、女性が社会に残る可能性が増える。そうなったときに、短期間でも男性の育児休暇が今後推奨されるような社会になる気がする。また、首都圏に住んでいると、離れて暮らしていて親世代の手伝いが難しい家庭もあるし、晩婚化の結果、親世代の高齢化で手伝ってもらうのが難しくなりそうだから。 (35歳 神奈川県 1児のママ・miyogreenさん)
■特に産後すぐの育児はとても大変なので、パートナーが休暇を取って助けてくれたら、すごくありがたいと思います。でも仕事を簡単に休めないという事情も分かります。もし社会が認めてくれるなら、たとえひと月でも、男性に育児休暇が取れると良いと思います。育児や家庭を大切にする男性は今後増えると思うので、きちんと制度があれば利用する人も増えるのではと思います。 (31歳 兵庫県 2児のママ・siro5047さん)
■芸能人や市長・知事の方でも堂々と育児休暇を取る方が出てきましたし、ニュースや自治体の取組みでも育児する男性の増加を促す傾向があるので。 (31歳 東京都 妊娠中・famさん)
●知事や市長が育休取得を率先することは意味がある?
【いいえ】
■公務員は取りやすいかもしれないが、一般企業は有給休暇すら取れないのが現実だから。 (27歳 千葉県 1児のママ・まなpさん)
■確かに男性の育児休暇取得のアピールにはなると思いますが、現実問題として働く環境が制度に追いついていない会社もたくさんあると思います。コスト面での負担も多い為、なかなか普及まではいかないと思います。 (31歳 愛知県 妊娠中・ふーにゃんこさん)
■立場がある人だからこそ取れるのであって、一般社員にはとうてい無理な話。母親の育児休暇でさえ取らないのが当たり前、という職場も多い中で、男性が取れないのは目に見えている。 (27歳 群馬県 1児のママ・なっとうきなーぜさん)
■一般市民にまでなかなか行き届かないと思う。宣言したところで、市民の生活は変わらないから、そんなことより、もっと、取得できるような環境を作って欲しい。金銭的にも職場環境も。 (32歳 三重県 2児のママ・☆かぁたん☆)
■トップは「お偉いさん」だから取れるけれど、実際働いている社員は取りにくい。それよりも、育児休暇を取りやすい制度や、出社せずに在宅で仕事をこなしても出勤扱いにしてくれるような制度を作って、仕事に支障をきたさずに育児にも参加できる制度を整備してほしい。 (28歳 大阪府 1児のママ・ななさん)
■パートナーの職種や業種により育児休暇が取得できるかの状況は変わりますし、行政のトップが育児休暇宣言をする=男性育児休暇取得の促進・普及につながるというものではないと思います。今、日本の景気がどういった状況にあるのか考えると、私は、男性が育児休暇を取って家庭に入り妻を支えることが明るい将来につながるとは思いません。むしろ育児休暇を取ることよりも、他の面で妻をサポートするほうが重要だと思います。 (32歳 和歌山県 2児のママ・リディアさん)
【はい】
■話題にはなるので、普及にはつながると思います。酷評もありますが、時代が変われば評価も逆になっているかもしれませんね。 (30歳 神奈川県 1児のママ・aiさん)
■男性の育児休暇が話題に取り上げられるだけでも、取得するハードルは低くなるかと思います。育児休暇を取ることが、社内的にマイナスになっても、社会全体にはプラスイメージだと思うので、そちらでカバーできれば男性の育児休暇も会社としてマイナスにはならないかと・・・。 (26歳 東京都 2児のママ・ちいこさん)
■末端セクションの人間は、常に上司の動向に左右され、プライベートの時間の使い方まで仕事と関連づけられています。いちばん上の上司が前例を作れば、末端の人間も取得可能になると思います。 (34歳 兵庫県 1児のママ・かんなぎさん)
■上司が積極的に取って見本を見せてくれたら、仕事人間の旦那さんでも「取ってもいいものなのかな? 上司が取るなら、自分も取ろうかな?」と思ってくれそうだから。周りの目が気になるし、仕事を他の人に頼みづらいのもあるので、上司の行動が重要。 (32歳 宮城県 2児のママ・ブリケッツさん)
■自分の住む自治体の長が育児休暇を取ることで、「じゃあ、自分の会社はどうなんだろう?」と興味を持つことに結びつきやすいと思います。育児休暇という制度があるということをまず知ってもらう、ということにつながっていると思います。 (33歳 愛知県 2児のママ・はなママさん)
■広島県知事が、頑張って育休を取ってくれるようだから。それでみんなが育休を取りやすくなるとは限らないけど・・・。でも、湯崎知事、応援しています! 橋下知事は、「周りが育休を取れるようになってから取れ」って言ったみたいだけど、周りができないから湯崎知事が率先してやってくれたんだと私は理解しています。 (36歳 広島県 1児のママ・カープ大好き!さん)
★関連リサーチ結果
VOL.93
パパの育児休暇について <2009年版>(2009年7月調査)
VOL.91-2
2人目のお子さんについて(その2) 上の子のケアについて(2009年7月調査)
VOL.7
パパの育児休暇について <2007年版>(2009年7月調査)
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