【ベビカム シニア・アドバイザー】産婦人科医師/ 元愛育病院院長・元東京大学医学部講師

実況中継 その2

  • 2015-06-29 17:00
  • 一般公開
  • テーマ:
2006年12月、堀口家に女の赤ちゃんが誕生するまでの記録(前号に続く)。

12月20日(40週0日)

今日が出産予定日。変化なし。

12月26日(40週6日)

午前5時15分頃 破水感。「真っ赤なのがたくさん出ています」(私)「色薄くない?」「真っ赤です。たくさん!」見せてもらうと濡れたナプキンの中央に薄く親指大についているだけ(妊婦と医者の差!)。着替えて主治医、病院、母親に本人が電話をするが慌てて、なかなか正しくダイヤルできない。初めておなかを触ったが、柔らかくそんなに大きい感じはしない。直接耳を当てて心音を聞く。靴を履いてからカメラを持ってない、カードが机の上に出っぱなし。「なにか食べたくなるかな」と姑。「起きたばかりじゃ食べられないよ」と息子。5時35~40分頃にやっと「急がなくていいよ」と送り出す。

14時半の面会時間に合わせてあとから病院へ。朝の診察で「子宮収縮が不規則で弱く、破水ではない」とのこと。3階の産科病棟に移るので全員雨と風の中を一時帰宅することにした。

12月27日(40週7日)

午前2時半頃 陣痛が始まったとの電話あり、朝電話をすると、「2~5分ごとで昨日より強い。座ってリラックスするのが上手になった」とのこと。

10時20分頃 子宮口8cm開大。未破水。陣痛開始後8時間が経過。LDR(※陣痛室・分娩室・回復室が一体となった部屋)に移ってから10時間ほど動いておらず、疲れた顔をしているので「今日はいい天気だよ。日の光を浴びると、気分転換になるよ」と、陣痛の合間に待合室まで行く。なんと真正面に笠雲をかぶった富士山が見える。

お昼頃 陣痛は2~5分ごとで不規則。強さも変化あり極めて有効な陣痛という訳でもない。助産師さんのすすめで、お風呂に入ったあと、15分ほど熟睡、「リセットできた」と元気になった。

15時頃 内診。9cm開大でステーション+1~2とやっと下り始めた。

15時45分 人工破膜。羊水混濁なし。5分後くらいに持続は20秒ほどと短いが、強い収縮が来る。以後は右下の側臥位を取る。張りは強くなり声が出る。持続は45秒を超えるくらいだが周期は相変わらず3~5分と不規則。痛みを強く訴えるようになる。からだに力が入るのを上手に、しかし必死に、呼吸法で逃す。

19時半頃 頭が見え始め、いよいよお産の準備。細かく息継ぎをしながらのいきみ。

20時12分 3824g、身長52cmの女児誕生。

側臥位のお産。切開なし。大きな胎盤が出たあとちょっと収縮が悪く、双合圧迫の膣内に入れた当直医の前腕を伝って流れる血が止まらない。血管確保。輪状マッサージでやっと収縮がよくなり止血した。私が左手で子宮底のマッサージを手伝っていると、左手が何か生暖かい…。「えっ?なぜこんなところに、出血?」それは母親の胸にうつ伏せになった赤ん坊のおしっこだった。左手の甲に赤ん坊の凹凸した足の裏が触れていた。裸の赤ん坊は母親の胸の温かさと心臓の鼓動で子宮の中にいる気になっていたに違いない。

退院後は、てんやわんやの大晦日、元旦。初産の母親の緊張・不安がたいへんなものであることを知った一週間だった。赤ん坊は起きていても、寝ていても何時間見ても飽きない。動物園の猿山と同じ…といったら怒られるかな。

(2007.05)
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