【ベビカム シニア・アドバイザー】産婦人科医師/ 元愛育病院院長・元東京大学医学部講師

切迫早産とは

  • 2015-06-29 16:20
  • 一般公開
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切迫早産とは、言葉のとおり早産が切迫した状態をいいます。つまり、本来閉まっているはずの子宮口が、2~3cm程度開いてしまう、あるいは規則的な子宮収縮が始まり、早産(妊娠22週から36週までの間に、未熟児の状態でお産になること)になる危険性が高くなるということです。

最近では切迫早産になる危険を早い段階で防ぐために、分娩監視装置を使って本人が自覚できないような子宮収縮や経膣式の超音波断層装置で子宮頚管の弛緩を見つけようと努力しています。その他、胎児を包んでいる羊水の入った袋(卵膜)の感染が子宮収縮を起こすことが分かり、また卵膜(絨毛膜+羊膜)の感染で作られる化学物質を検出できる方法が確立したということも、早めの診断を可能にし、効果的に早産の予防ができるようになってきたのです。

なぜ、早産予防の努力がされるのでしょうか。未熟児医療の目覚しい進歩は、未熟児の予後を著しく改善しました。1000g未満の未熟児の救命率は1985年の58.8%から95年の78.2%となったのです。

しかし、養育のために必要な医療(NICU*)の努力は大変なものではありますが、NICUのためのベッド数も十分にあるとは言えません。さらに、神経学的後遺症は10~20%にみられるのです。生まれてきた未熟児を育てることも大切ですが、早産を予防することの重要性は明らかです。

切迫早産の治療とは?

原則は、入院、安静そして子宮収縮を抑制することです。子宮収縮抑制剤を持続的に静脈内投与(点滴静注)します。これで子宮収縮の抑制ができたら、点滴静注の速度を少しずつ遅くし、子宮収縮抑制剤の内服に切り替えます。同時に卵膜の細菌感染(絨毛膜羊膜炎)に対する抗生物質の投与や膣の消毒が行われることも多くなりました。また、化学物質による子宮頚管の熟化(やわらかくなること)を防ぐための薬剤を膣内に投与する方法が使われることもあります。これらの処置によって、規則的なあるいは強い子宮収縮が抑制でき、子宮頚管の長さが20mm以上保たれ、妊娠37週間で妊娠を継続できるという見通しがたったならば、一時退院することも可能です。

破水について

破水とは、胎児が入っている袋(卵膜)が破れて羊水が流出することです。子宮口が開いて強い子宮収縮が起こったときにおこるのが一般的です。卵膜の細菌感染(絨毛膜羊膜炎)が起こっていると、膜が脆弱(ぜいじゃく)になるので強い子宮収縮がなくても、膜が破れることがあります。破水すると、子宮内の胎児への細菌感染の危険が増加します。また、強い規則的な子宮収縮が起こりやすくなります。この2つの理由で37週未満でも破水をするとお産にもっていかざるを得なくなります。

切迫早産や破水は予防できるのか?

切迫早産や破水を予防するためには、細菌感染(絨毛膜羊膜炎)の予防と、強い規則的な子宮収縮を防ぐことが重要になります。そのためにはやたらに内診をしない、性行は控えるかコンドームを使用する、頻回に腹部が張るようだったら診察を受けるなどがすすめられることです。しかし、これらの方法のすべてについてはっきりした根拠となるようなデータが揃っている訳ではありません。しかし、早産未熟児で生まれることはご家族にとっても、赤ちゃん自身にとっても辛いことです。切迫早産(早産になりそうな状態)をできるだけ早く見つけ、早産になるのを防ぐ努力をすることが大切なのです。

NICUとは

新生児集中治療室のこと。

出生体重率1000gに満たない低体重児から、生後早期に手術治療を必要とする新生児まで様々な赤ちゃんの治療と看護にあたっています。

(2004.08)
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