【ベビカム シニア・アドバイザー】産婦人科医師/ 元愛育病院院長・元東京大学医学部講師

お産で病院に行くタイミングは?

  • 2015-06-29 15:50
  • 一般公開
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前回は、陣痛を経験する分娩について、ふれました。分娩が順調にすすむためには陣痛が十分な強さにならなければなりません。前回の繰り返しになりますが、これが胎児に影響を与えるかもしれないのは、皮肉なことです。今回はその、胎児に影響を与える陣痛を経験しないお産「帝王切開」についても考えてみたいと思います。

陣痛が始まった時

「陣痛が始まったのがわかるか」と多くの妊婦が心配します。初めての経験だとすれば無理もないことです。妊娠後半期には大部分の人が「お腹の張り(=子宮の収縮)」を感じています。少し長く歩いた時、夕方、夜寝る前、夜中、目が覚めた時などです。そんな時お腹をさわってみるとふだんよりも硬くなっているのがわかるでしょう。子宮筋が収縮しているからです。これでガスがたまったり、食べ過ぎた時にお腹が張っているなどの状態と区別ができます。この子宮の収縮が1時間に5~6回、規則的に繰り返し、横になっていても続いている時、あるいはだんだん強くなる時は「陣痛が始まった」と考えて、産科に電話連絡してください。

一度陣痛が始まっても止まってしまうこともあり、そのままお産が進むか、一休みしてしまうかを予測するのはむずかしいことなのです。陣痛が始まって1~2時間で生まれてしまうことはありませんから、あわてることはないのです。ただし、破水した時は進みが速くなることがあります。また、痛みを伴うとは限りませんし、腰の張りだけのこともあります。必ずお腹をさわって硬くなるかどうかを見ることです。

破水した時

お腹の中の赤ちゃんは、卵膜というゴム風船のような袋の中の羊水に浮かんでいます。この卵膜に穴が開いて羊水が流れ出るのが「破水」です。胎児が動いたり、母親が動いたりする度に羊水が(オシッコのように)流れ出ます。臭いをかいでみればわかります。この場合はすぐに入院してください。あまり続いて流れない時、臭いがはっきりしないなどでわかりにくい時は、受診してください。胎児を包んでいる卵膜に穴が開くと細菌感染の危険が倍増するからです。

子宮の出口(子宮頚管)の分泌物は水っぽいことがあり、検査をしないとわからない場合があります。また、破水すると陣痛が始まったり、強くなったりすることが多いのです。

この時期の羊水は、大部分(85%)が胎児の尿で、1時間に30~50ミリリットル位の割合で排尿されています。

出血した時

月経の多い時のような出血、大きな(例えばゴルフボール大)血のかたまりが出た時はすぐに入院です。お腹の痛みや破水の有無などは関係ありません。いろいろな異常を考えて、安全対策をはからなければならないからです。もちろん全く心配のないこともあるのですが、心配ないかどうかの検査が必要なのです。

外来診察などで内診した時は少量の出血が見られることがあります。また「おしるし」という子宮口が開き始めた時に見られる粘液と混ざった血液が出ることがあります。この場合には量が少なく、拭いた時につく程度、あるいは下着にテレカくらいの大きさにつく程度のことが多いのです。

その他の異常症状がある時

発熱、頭痛、むくみ、強い胃痛、嘔吐などは、妊娠中毒症その他の合併症の始まりであることがあります。それまでの定期検診で、異常がなくても受診してください。

なお、ここまでふれてこなかったことで妊娠の徴候をあらわす症状もありますが、次の状態は「お産が近づいたしるし」であっても、入院すべきかどうかの症状ではありません。

・胃の辺りが楽になる(空いてくる)。
・脚のつけ根が痛くなる
・恥骨のあたりをゴリゴリ押される。
・お腹の張り(子宮の収縮)が多くなる。
・「おしるし」がある。
・胎動が少なくなる(極端に少なくなったり、なくなった時は診療を)。

これらの時は、順調にお産が近づいているのだと考えておきましょう。出産予定日を過ぎたりすると特に、気持ちが前へ前へといきやすいのですが、どうぞむやみにあわてずに、「しあわせなお産」に向けてゆっくりと心の準備をしておきましょう

(2003.05)
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