【ベビカム シニア・アドバイザー】産婦人科医師/ 元愛育病院院長・元東京大学医学部講師

流産についてのもろもろ

  • 2015-06-29 15:20
  • 一般公開
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この連載のタイトルは「しあわせなお産」ですが、今回は「流産」についてお話しします。「流産」について正しく理解することは、しあわせなお産のために必要なことです。

流産の頻度と理由

「流産はどれくらいの頻度で起こるのでしょうか?」

「どうして流産になってしまうのですか?」

「流産がどのくらいの頻度でみられるのか」は以前に一度、お話ししたことがあると思います。およそ10~15%といわれています。数十年前に行われた研究で、その半分以上(およそ60%)は染色体異常であったと報告されています。受精卵(あるいは胎芽)はあるところまで大きくなっても、その異常のために発育が止まってしまい、やがて死んでしまいます。このことは、新しく開発されて1980年頃から一般にも使われはじめた経膣超音波診断装置によって臨床の場でも確認されました。

1週間に1?の割合で胎嚢(胎芽の入っている袋)、あるいは胎芽が大きくなれば、発育は順調であると判断できます。さらに心臓の拍動を経膣超音波の画像で確認できれば、その胎芽に(流産になってしまうような)大きな異常はないことがわかり、99%流産の心配はないといえるようになったのです。

赤~茶色のおりものが少しあったり、下腹に痛みがあったときでも、自宅での安静を言われたり、入院安静を言い渡されたりすることはほとんどなくなりました。妊娠初期の妊婦さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)がそれだけ向上したといえるでしょう。

流産の始まり、症状

「発育の止まった胎芽はどうなるのでしょうか?」

数週間すると下腹部が痛くなったり、出血が始まったりします。これが「流産」の始まりです。

昔(1960~1970年頃まで)は、このような状態になって初めて流産になるかもしれないと意識したのです。多くの場合、出血はどんどん多くなり、月経の多いときよりもさらに多い出血や血の塊が出たり、下腹痛のために病院に駆け込むということになります。

この出血や下腹痛は、死んでしまった胎芽を子宮の外に排出するための症状です(進行流産)。大部分が排出されて、まだ一部が残った状態(不全流産)では全部出切ってしまうまで出血・下腹痛は続きます。全部出切ってしまえば(完全流産)、出血も下腹痛も止まりますが、自然に全部出切らないことも多く、子宮の中に残っているものを除去するための処置(流産手術・子宮内容清掃術・掻爬)が必要になります。

流産は癖になる?

「流産は癖になると聞きましたが…」

子宮の奇形や子宮筋腫の一部、子宮などの内性器の感染、自己免疫疾患などがあると流産をくり返すことがあります。流産したことが、次の妊娠の流産の原因になることはまずないと考えてよいでしょう。

また受精卵の染色体の異常が流産の原因と聞くと、精子や卵子の異常があると思いがちですが、精子や卵子に異常があると受精できないのです。癖になることはありませんし、くり返すことも稀なことです。

ただ反復する原因になるようなことがないかを尋ねておくといいでしょう。
流産は癖になる?

「次の妊娠は、どれくらい経ってからがよいのでしょうか?」

流産の後、およそ1カ月で月経が再開します。月経があるということは体の状態(子宮やホルモンの分泌の状態)は元に戻ったとみなしていいのです。

したがって、その次の排卵で妊娠しても構わないと言えます。しかし、「念のため、2回月経があったら妊娠してもよい」と言われることが多いと思います。

蛇足。

上に述べた流産は、妊娠とわかってからのことです。最後の月経のあと排卵受精したけれども、子宮内膜に着床できない、あるいは着床しても発育できず、次の予定月経の前後に流産が始まり出血すると、月経が少し早かったとか少し遅れたという感じで終わってしまうこともあるのです。

このような極めて早期の流産も15%ぐらいあるとも言われます。このことから考えれば、受精卵の60%しか育たないということになります。

生まれた子どもは(当然のことですが)、大事にしなければと思います。

(2001.10)
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