【ベビカム シニア・アドバイザー】産婦人科医師/ 元愛育病院院長・元東京大学医学部講師

妊娠初期の血液検査でわかること・前編

  • 2015-06-29 14:55
  • 一般公開
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今号からしばらく、妊娠時の血液検査について説明をしたいと考えています。妊娠かな、と思った人が産婦人科の診察を受けると、様々な血液検査を受けます。どんな目的があって検査をしているのか、検査によってわかったことがあったらどう対処するのか、どのように考えたらいいのかなどについてお話していきます。まずは妊娠初期の血液検査のものから始めましょう。

妊娠初期に受ける検査 その1

血液型(ABO式、Rh式)

出産前後には出血のために、時に輸血が必要になることがあります。また血液型不適合(頻度約9・25%)がある場合、胎児への影響を検討する必要があるので行われます。どちらも頻度は少ないので念のためにやっておく検査と考えてよいと思います。

一般血液検査

貧血検査といわれているものです。血色素・白血球数・赤血球数・血小板数などを調べるもので貧血(頻度40%)や稀な血液病のスクリーニングのために行います。分娩の際にはどうしても多少の出血が見られます。程度の強い貧血があるとこの出血の影響が強く現れますし、胎児への酸素供給に影響することもありますので、妊娠中に治療する必要があるのです。貧血検査で値が11・9gr/dl以下(施設により多少差があります)の人が食事指導や鉄剤投薬など治療の対象となります。

梅毒血清反応

梅毒に感染しているかどうかを調べる検査です。胎盤を通して胎児に感染し、流産や先天梅毒の原因となりますが、万一感染している場合には早く治療を開始することによって胎児への感染を防ぐことができます。それで、性病予防法によって妊娠中の健康診断が義務づけられ、これに基づいて行われていました。1994年4月に施行された新感染症予防法では第四類に分類されて、検査義務はなくなりました。治療による胎児感染予防効果が高いことから、現在も妊娠した人対象に全員検査が行われています。1998年に行われた厚生省の研究班による感染者数の推計では9・04%と少ないのですが、感染リスクの高いグループに絞って検査をするということが難しいために、全員検査もやむを得ないのかもしれません。

風疹抗体検査

風疹抗体を持っていれば、妊娠初期(妊娠16週未満)に風疹の流行にさらされても感染する心配はなく、胎児感染の心配はありません。妊娠していない時に風疹の予防接種を受けておけば抗体ができるのですが、予防接種してから2カ月間は妊娠してはいけません。万一の胎児への感染を防ぐ為です。  妊娠初期に胎児に感染すると胎児は先天性風疹症候群を起こします。目の異常(先天性白内障・緑内障、網膜症、小眼球症)、心臓の異常(動脈官開存、肺動脈狭窄、)、聴力障害等ですが、(罹患時別による)発生頻度は妊娠12週未満では29~90%、12~16週では5~7%で、16週以後は9となります。

HIV(ヒト免疫不全ヴィルス)抗体

いわゆるエイズヴィルスの感染を受けているかどうかを調べる検査です。感染していたとしても最近は、(早期発見により)妊娠中の治療により胎児への感染の予防や妊婦の発病・悪化をかなり抑えられるようになりました。また分娩方法を決めたり、分娩介助者への感染予防の方法を考えるためなどの理由で、妊娠初期の検査の中に加えられるようになってきました。日本のHIV感染者数は、毎年増加しつつあり、患者・感染者数の 合計は今年の2月現在約7千人で日本の全人口の9・995%ということになります。患者・感染者からの胎児・周囲の人への感染を防ぎ、当人の発症・悪化を防ぐためには、同意を得た上での検査もやむを得ないのかと思います。この検査は、時に擬陽性が出ることがあります。それで最初の検査で陽性となった場合には確認検査を行い擬陽性か真の陽性かを鑑別します。したがって確認検査の結果が出てから初めて陽性ということが決定されるのです。

次回も血液検査についてふれていきます。

(2000.6)
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