【ベビカム シニア・アドバイザー】産婦人科医師/ 元愛育病院院長・元東京大学医学部講師

妊娠中のおなかの痛み ―心配?それとも心配ない?―

  • 2015-06-29 14:05
  • 一般公開
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検診時、おなかの痛みがあると訴えても、「それは心配ない」と言われ、それはなぜなのかと思った妊婦さんもいるでしょう。そんな診察の背景を今回は謎解きしてみましょうか。

「痛み」は、本来からだに何か異常が起こっていることを知らせる症状と言われます。ケガ、感染や異常などで感じる痛みや風邪をひいたり血圧が高くなった時の頭痛などは確かにからだの異変を知らせます。 したがって、妊娠した時に下腹痛や下腹部の違和感を感じたときに「何か異変が起こっているのでは?」と不安な気持ちになるのも当然のことと思います。

妊娠していない時の子宮は8×4×3cmくらいの大きさですが、妊娠20週頃にはバレーボールくらいの大きさ、妊娠40週には35×25×22cmくらいの大きさになるのですから、「なんともない」という方がおかしいとさえ考えられます。

一方、妊娠初期の自然流産は10~15%もありますし、早産も3~4%ありますから、下腹部の痛みや出血がどれくらい心配なものかどうか考えてみましょう。

妊娠の初期(妊娠15週くらいまで)

妊娠6週のはじめ子宮の中の胎のうは直径10mmくらいですが、1日に1mmくらいの早さで大きくなります。10日もすると20mmになるわけですから、それに合わせて子宮も大きくなり、そのために下腹部の不快感(つれる感じ、張る感じ)が気になることがあります。また子宮を支える円靭帯(えんじんたい・右図参照)が子宮が大きくなるために引っ張られて、ひきつれる様な痛みを右または左の下腹部(円靭帯のところ)に感じることがあります。また右または左の足のつけ根の痛みとして感じられることもあります。

下腹部中央(恥骨のすぐ上)の強い月経痛様の痛みは子宮収縮のためのもので、流産との関係が考えられるものですが痛みの場所が違うのでわかります。もし心配ならば、診察を受けてください。

胎児が超音波の検査で妊娠週数に合った大きさに発育しており、心臓の拍動を認めることができ、さらに痛みの場所が円靭帯に一致している限局性のものであれば、心配はないものなのです。診察ではこのような点をチェックしているのです。

このような痛みは、およそ10%くらいの人が感じているように思います。 この時、わずかな出血(赤かったり、褐色だったり、また少ないときは、うす茶色のこともあります)が一緒に認められることもあります。ちょうど月経の予定の日頃にみられることもありますが、全く関係のない時期のこともあります。出血の量が少なければ心配のないもので、子宮やその周囲のうっ血のために起こることです。

しかし、どれくらいなら少ないと考えてよいのかは、なかなかわかり難いことですから、一度診察を受けることが必要です。そして心配がないことを確かめておきましょう。

自然流産について

自然流産は10%~15%くらいもある、結構多いものなのですが、その大部分(60%以上)は染色体の異常です。受精した卵に何らかの異常があるために、途中で発育が止まってしまい、数週間後に出血・下腹痛という流産の症状が現れるのです。したがって多少の症状があっても、超音波を使った検査で、胎児が順調に発育、大きくなっていること、心臓の拍動が確認できれば、多少の症状があっても、九分九厘(99%)流産の心配はないということができるのです。

妊娠中期(妊娠16週)以後

妊娠中期以後もこのような円靭帯の牽引痛がみられることもありますが、ずっと少なくなります。痛みを訴える妊婦さんを診察しながら、大きくなった子宮の右(または左)側を診察すると、限局した圧痛と少し太くなった円靭帯を触れることができます。

この時期になると、生理的な(異常ではない)子宮の収縮を感じるようになります(個人差がありお産になる陣痛が始まるまで、子宮の収縮を感じる人もいますけれど)。これは痛みとして感じることはあまりありません。特に歩いた時、胎児が強く動いた時に下腹が張ったという感じが多いようです。この時、手で触れてみると子宮が丸くボールのように固くなるので収縮しているのを手のひらに感じることができます。しばらくすると、すっと硬さが消え、やわらかくなるので収縮であることを自分で確認できます。

このような子宮の収縮が心配のないものかどうかは、痛みがほとんどないこと、1日に4~5回ないし7~8回であること、そしていつも同じような回数・強さであること、などで判断することができます。一度診察を受けて、子宮口に変化がないことを確認してもらえば安心です。

早産と子宮筋腫の痛み

妊娠22週から36週までの間にお産になった場合、早産と言います。妊娠22週では胎児は500グラムぐらい、36週には2500グラムくらいです。ただ小さいだけではなく、生まれる時期が早ければ早いほど、肺や肝臓や腎臓(じんぞう)などの働きが未熟なために様々な問題が起こる可能性があります。早産は全妊娠の3~4%の頻度です。 陣痛や破水、出血がみられる時に早産にまで進んでいく可能性があり、この様な場合にはできるだけ早く診察を受け、治療をしなければなりません。陣痛は1時間に数回の子宮収縮がある状態で、痛みは必ずしも感じるとは限りません。変だなと思ったら、手でおなかをさわってみてください。子宮が硬くなりそれが周期的に1時間に数回起こるようなら、急いで(夜中でも)診察を受けてください。

妊娠中期に稀にみられる痛みとして、子宮筋腫がある場合があります。子宮筋腫そのものは「5人に1人くらいにある」という医師もあるくらい、よくみられるものです。妊娠やお産に影響することは、ほとんどないのですが、時に子宮が大きくなることの影響を受けて、子宮筋腫も大きくなったり、子宮筋腫の中心が軟化したりして、子宮筋腫の部分の強い痛みを感じることがあります。1~2週間で自然に痛みは消えることが多いのですが、入院して痛みを止める処置をする必要があることもあります。しかし一時的なもので、分娩が終わるまでずっと痛みが続くということはありません。自己判断は難しいと思いますので、このような痛みがあるときは、子宮筋腫があると言われていなくても、診察を受ける必要があります。痛みがとれれば基本的には心配のないものです。

(1998.08)
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