日本産婦人科医会より放射能汚染に関する資料が提出されました

  • 2011-05-20 14:48
  • 一般公開
  • テーマ:放射能関連
2011年4月27日、日本産婦人科医会 研修委員会より「放射能汚染に関する基礎知識と現実的対応」の改訂版が出されました。

この資料は、「放射線」「放射能」といった放射能に関する基本的な言葉の定義や意味、「被ばく」の意味、ベクレル、グレイ、シーベルトといった放射線量の単位などが詳しく紹介されており、国際放射線防護委員会(ICRP)や国際原子力機関(IAEA)、厚生労働省ほか多数の関連学会や団体の論文などを元にまとめられたものです。

その中から、妊娠中のママに直接関わりのある「被ばくの妊娠週数による胎児への影響」と「中枢神経系への影響」を抜粋してご紹介します。

*文中で表示されている放射線量のGy(グレイ)について

シーベルトの値=グレイの値 × 放射線荷重係数 × 組織荷重係数
(2008 年時点で、日本で用いられている値)
*放射性ヨウ素131I では、およそ1グレイ = 1シーベルト
*放射線のほとんどがβ線なので、放射線荷重係数はおよそ1、また各臓器や組織の組織荷重係数を合算した全身の組織荷重係数は1なので、
1グレイ(Gy) × (放射線荷重係数:1) × (組織荷重係数:1) = 1シーベルト(Sv)
1mGy(ミリグレイ)=1mSv(ミリシーベルト)となります。


(1)被ばくの妊娠週数による胎児への影響
・受精後10 日までの被ばく

奇形発生率の上昇はない。大量の放射線は受精卵を死亡させ流産を起こす可能性があるが、流産せずに生き残った胎芽は完全に修復されて奇形(形態異常)を残すことはなく、'all or none'の法則が成り立つといわれている。

・受精から8 週間(妊娠10 週)まで
放射線感受性が高く、胎児奇形の原因になる可能性がある。
ICRP の報告書84(ICPR84)には、「100mGy 未満の胎児線量は妊娠中絶の原因と考えるべきではない」と記載されている。2003 年のICRP 報告では、奇形を誘発する吸収線量は100mGy 前後にあると判断されており100mGy を下回る胎児被ばくでは、奇形発生リスクはないとされる。

さらに、「この時期であっても50mGy 未満の被ばくでは奇形発生率を増加させない」と「産婦人科診療ガイドライン産科編2011」には記載されている。この時期に100mGy(閾値 [しきい値])以上の被ばくを受けた場合、奇形発生率は上昇するとの報告がある一方、100~500mGy の被ばくでも奇形発生率は増加しないとする報告もある。

・妊娠11 週以降
胎児はすでに臓器が形成された後であり、胎児奇形への影響はない。

・妊娠10~27 週
この時期の胎児被ばくは、中枢神経障害を起こし、精神発育の遅れに関与する可能性があるが、100mGy 未満の被ばくでは影響しない。

(2)中枢神経系への影響
・妊娠10~17 週の胎児中枢神経系は、細胞分裂が旺盛で、放射線被ばくの影響を受けやすく、被ばくは精神発育遅滞の頻度を増加させる可能性がある。
・妊娠18~27 週では中枢神経系の放射線への感受性は低下する。
・妊娠10 週未満および妊娠28 週以降の被ばくは、中枢神経系に悪影響を与えないとされる。
・重症精神発育遅滞は、500mGy 以上の被ばくで起こるとされ、その程度は、線量依存性であり、1Gy で40%に、1.5Gy で60%に重症精神発育遅滞が起こると報告されている。
・100mGy 以上の被ばくで小頭症が増加したとの報告もある。
・放射線被ばくはIQ 低下に関与するとされ、妊娠10~17 週での1Gy の被ばくはIQ を25~29 point 低下させるとの報告がある。IQ 低下にしきい値が存在するかについての結論はでていないが、しきい値は100mGy 程度とされている。実際、100mGy 以下の低い線量の被ばくにより、妊娠のいずれの時期であっても、IQ 低下は確認されていない。

出典:日本産婦人科医会「放射能汚染に関する基礎知識と現実的対応」(会員向け)(2011.4.27改訂版)
http://www.jaog.or.jp/News/2011/sinsai/kensyu_0427.pdf
日本産婦人科医会HP
http://www.jaog.or.jp/
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