胎児の首にへその緒が巻いていると言われました

へその緒がまきついている状態を、医学用語で、臍帯巻絡（さいたいけんらく）と言います。


１）臍帯巻絡の頻度 １９７５年～１９７８年に都立築地産院で行った調査では、６９９５例の分娩の中で臍帯巻絡のあった例は２２６３例３２.4%におよびます。すなはち1/3の例で臍帯卷絡が認められると言うことです。
２）臍帯巻絡の胎児への影響 ６９９５例の分娩でアプガー・スコア６点以下の者は４６５例（７.7%)でした（アプガー・スコアのことは最後に説明します）。これはすべてのお産の異常を含んでいます。したがって４６５例の低アプガー・スコアーが臍帯巻絡を原因として起こったものと考えられる例は、それほど多くないと思われます。なぜかならば、お産の異常には　３２１例の骨盤位・５９３例の分娩遷延・６２例の常位胎盤早期剥離・９２例の重症妊娠中毒症・４０例の超未熟児等これだけで低アプガー・スコアーの原因となる異常を含んでいるからです。
３）臍帯巻絡の診断と胎児への影響の診断現在は超音波断層法の検査で診断することは可能です。しかしこれを確実に診断しようとして時間をかけることはしないことが多いのです。理由はその頻度が３０％をこえる程高いこと、および胎児へ影響を与えているかどうかは分娩監視装置で胎児心博曲線を記録することで判断できるからです。
４）普通分娩の危険度普通分娩と言うのはここでは経腟分娩のことだと思いますが、臍帯巻絡が３０％以上もあるのですから、この全例を帝王切開する危険度の方が高いのです。分娩が始まってから分娩監視装置で危険の症状を発見した時に分娩方針を帝王切開に切り替えるのが普通の分娩管理の方法です。帝王切開の危険とは、麻酔に因るもの・手術操作に因るもの・赤ちゃんの呼吸確立に関係するものです。
５）臍帯巻絡の原因胎児が子宮内で運動するからです。胎動が盛んだと臍帯巻絡をおこしやすいのではないかと心配する人が多いのですが、胎児が良く動くと巻き付いた臍帯がはずれる可能性も高いので、心配はご無用です。高い所に手を伸ばすといけないとか言われることもありますがこれも根拠はありません。

■２）のところで、ふれたアプガー・スコアについて説明します。
アプガー・スコアとは生まれた直後の赤ちゃんの状態を５項目について点数を付けて、客観的に評価しようとするものです。満点が１０点です。
しかし、赤ちゃんは子宮の中から子宮の外へ出てくるという大仕事をしたばかりですので、８～９点ということが多いのです。
ちょうど走った後は「息が切れ」たり、「動悸がして脈が速く」なったり、「顔色が赤くなったり、青く」なったりするのと同じです。
昔から言われた新生児仮死とは凡そ６点以下を言います。

アプガー・スコアは生まれた時の呼吸や色や筋肉の緊張状態などがこうでしたと言うことで、今後注意して診ていましょうというためのものです。
したがって、障害を残すかどうかとは直接は関係のない数字なのです。