冬に起こりやすい嘔吐
冬が近づくと、冬季嘔吐下痢症で病院を受診するお子さんが増えてきます。医学的には急性胃腸炎といい、夏季は細菌感染によるものが比較的多いのに対し、冬季はウイルス感染が主体です。最も頻度が多いのは、ロタウイルスですが、その他、ノロウイルスやアデノウイルスなども冬季の胃腸炎の原因になります。ロタウイルスによる胃腸炎は、主に2歳以下のお子さんたちを中心に発症し、11〜3月に多く、特に、寒さの厳しい年に流行する傾向が見られます。
感染してから、実際に症状が発症するまでの期間は約1〜3日で、主な症状は、嘔吐、下痢、発熱です。通常3〜8日間で改善しますが、症状や病状の程度は個人差があり、時には症状が強いこともありますので、注意が必要です。特に下痢は、90%以上にみられ、白色の水様下痢便が1日に10数回以上でることがあり、脱水を起こしやすいので気をつけましょう。また、他のウイルスより嘔吐をともなう頻度が高く、個人差はありますが、1日1〜10回、平均約4〜5回見られ、通常は2日間程度で消失します。発熱も通常は約2日間で解熱します。
■予防
ウイルスを排出する期間は、下痢消失後2〜5日間といわれ、この間は便を介して、周囲に感染を拡げる危険がありますので、便の始末やおむつ換え後の手洗いを十分行い、感染を拡げないよう注意が必要です。便で汚染されたものが、口に入ることで感染が成立する経口感染ですので、予防は十分な手洗いとうがいです。
■治療
かかってしまった時は、ウイルス性胃腸炎を治すための特効薬はないので、対症療法が治療の中心になります。嘔吐や下痢で失われた電解質や水分の補給と、脱水の予防のために、水分摂取を十分に行うことが大切です。水分が足りているかどうかのひとつの目安は、おしっこの量です。少ないときは、水分が不足しているサイン。では、実際にはどのように水分を摂るとよいのでしょうか。
1.下痢が主体で嘔吐がほとんどない時
お水、お茶などに乳幼児用のイオン飲料やりんごジュース、薄めのお味噌汁などを併用し、積極的に経口で水分、糖分、塩分などを補充するようにしましょう。1回の摂取量が多いと、嘔吐、下痢を誘発しやすいので、スプーンなどを使用して少量の水分を頻回に摂ってください。少量・頻回は、嘔吐下痢時の水分摂取の大原則です。改善してくるようなら、お粥や、バナナ、りんごをつぶしたものなど消化の良いものを少しずつ始めましょう。
2.下痢がひどい時
腸が弱って通常の働きができない状態なので、負担を減らすため、食物の量と質を制限することが大切です。離乳食はいったんお休みして、水分中心にしましょう。また、母乳栄養のお子さんは、母乳を止める必要はありませんが少量ずつ与えるようにし、ミルクを使用しているお子さんは、1/2 〜 1/3まで希釈するとよいでしょう。薄めた果汁や乳幼児用のイオン飲料を与えてみてください。柑橘系のジュースは嘔吐や下痢を誘発することがあるので、控えましょう。
3.嘔吐がひどい時
嘔気が強い時は、胃にものが入ることが刺激になり、さらに吐いてしまい悪循環になってしまいます。繰り返し吐くことを防ぐために、一度、食べたり飲んだりすることを止めましょう。2〜3時間様子をみて、吐き気がおさまれば、少量の水分や氷のかけらなどをあげて下さい。30分様子をみて大丈夫なら、徐々に回数を増やして、少量・頻回で水分をとるようにします。
上記の方法でも、全く口から水分が摂れない時、お子さんのぐったり感が強い時、唇や舌、皮膚が乾燥して全身状態が悪い時などは、必ず小児科を受診してください。点滴が必要になるかもしれませんし、感染症ではない病気も考える必要があるかもしれません。
ウイルス性胃腸炎はどのお子さんも、一度は経験する日常的な病気ですが、時に重症となることもあります。症状も大切ですが、いちばん大切なことはお子さんの状態です。症状の程度に関わらず、元気がない、機嫌が異常に悪いなど、心配な場合は早めに小児科を受診するようにしましょう。
作間未織先生 東京慈恵会医科大学病院・小児科
東京慈恵会医科大学卒業。同附属病院での研修、病棟勤務を経て、現在は同大学大学院に在籍中。臨床疫学研究を行う一方で、小児の健康を維持するためには病気の予防が大切と考え、ハーバード大学パブリックヘルススクールに短期留学をするなど、パブリックヘルスの分野を勉強している。