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駅でもベビーカーの貸し出し

●福岡市営地下鉄天神駅・天神南駅の「のりかえベビーカー」

福岡市営地下鉄には、福岡空港とJR筑肥線の姪浜との間を結ぶ空港線、空港線の中洲川端で分岐して貝塚方面に向かう箱崎線と、市中心部の天神地区と市南西部を結ぶ七隈線の3路線がある。

このうち、空港線と七隈線は、ともに福岡市最大の繁華街である天神地区に乗り入れており、駅も設けられているが、建設の経緯から空港線は「天神」、七隈線は「天神南」と別個の駅になっている。空港線と七隈線を乗り継ぐ場合、同じ市営地下鉄の路線なので運賃は通しで計算されるが、実際に乗り継ぐには、いったん改札を出て天神地下街の中を500メートルほど歩く必要がある。

このように、天神駅と天神南駅との間では、乗り換えの負担が大きいことは当初から予想されていたが、案の定、高齢者や小さな子どもづれの母親たちからの不満の声は、多数寄せられたようだ。

そうした中で、子育て中の母親たちの声を受けて、2008年7月1日から、天神駅と天神南駅との間で、「のりかえベビーカー」と称する駅でのベビーカー貸し出しサービスが実施されている。

貸し出しの方法は、降りた駅の改札係員に「のりかえベビーカー」を使用したい旨を申し出て、貸し出し簿に住所・氏名等を記入し、乗り換え先の駅の改札係員に返却するという単純なもので、費用はかからない。


●ベビーカーで電車に乗車するのは何のため?

電車内でのベビーカー利用について、鉄道事業者は、以前は車内事故防止の観点から「車内ではベビーカーをたたむこと」とルール化していたが、最近では、「混雑時でなければ、子どもを乗せたままでもよい」という方向に変化している。この方向性の変化に、エレベーターなどバリアフリー施設の整備が進展しつつあることが相まって、ベビーカーで電車に乗車する人が増えていること、それに伴い、電車のドアにはさまれる、ホームと電車の段差やすき間に引っ掛かる等のトラブルも増加していることは、ベビカムウィークリーサーチVOL.43-1の「まとめ」で、すでに言及している通りである。

ここで考えておきたいのは、ベビーカーで電車に乗車する親子が、何のためにベビーカーを使うのかということだ。多くの場合、それは電車に乗るためではなく、目的地(降車駅の周辺)で、子どもを連れてあちこち立ち寄りたいからだろう。だとすれば、駅でベビーカーが借りられれば、電車の車内や乗り降りで無理にベビーカーを使おうとは思わない、という人も皆無ではないだろう。

この点で、福岡市が実施している駅での「ベビーカー貸し出しサービス」は、参考になる。


●駅での「ベビーカー貸し出しサービス」の可能性

東京や大阪では、「繁華街にある、乗り換えの負担の大きい駅」は、多数存在する。

一方、現在福岡市で実施されているサービスは、試行的な要素も強く、万が一のベビーカーの持ち去り(盗難)を防ぐための対策として、貸し出し簿に住所・氏名等の個人情報を記入するという単純な方法をとっている。個人情報の流出事件が頻発するなかで、つど個人情報を記入するという方法に抵抗を感じる人もいるだろう。

もっとも、その点は普及が著しいSuica、PASMO、ICOCA、PiTaPaなどのICカード乗車券の機能を利用すれば、克服可能だ。これらのICカード乗車券のうち、記名式のカード所有者のみ貸し出し可能とし、貸し出し時にカード本体のID番号のみチェックする(万が一ベビーカーが未返却になった場合にのみ、ID番号からカード所有者を割り出す)ような方式にすれば、つど個人情報を記入しない貸し出し方法も可能だろう。

もちろん、ベビーカーで電車に乗ることには、目的地(降車駅周辺)での行動以上に、自宅から乗車駅までの間もベビーカーを使いたいという事情のほうが、より大きい。ならば、降車駅での貸し出しサービスに、乗車駅でのベビーカー預かりサービスを組み合わせるのもいいだろう。

駅のプラットホーム上や電車の車内、あるいは乗り降りのときなど、「改札の内側」でベビーカーを使うことは場合によって危険性もあり、鉄道事業者にはそれを防止する責任がある。しかし、「改札の外側」でのベビーカー使用については、鉄道事業者は基本的に無関係な立場だ。

鉄道事業者が、「改札の内側」でのベビーカー事故の防止のため、(混雑しているときはベビーカーをたたむなど)ベビーカーを安全に使いましょう・・・というキャンペーンを展開することも、当然重要である。しかし、利用者は電車に乗車するためにベビーカーを使うのではなく、「改札の外側」(乗車する前後)の行動範囲を広げるためにベビーカーを使いたいのだという点を考慮すれば、改札の内側と外側の事情を両立させるためにはどうすべきかということも、鉄道事業者は検討すべきだろう。検討の基礎となる技術的要素や試験的サービスは、すでに存在しているのだから、何らかの新たな方策を期待したい。


⇒福岡市交通局 交通局からのお知らせ『地下鉄天神駅~天神南駅に「のりかえベビーカー」を導入しました』

千葉モノレールホームページ
 (トピックス 2006.04.01「千葉駅に無料貸出用ベビーカーをご用意しました」を参照)
 ※鉄道事業者自身が、駅でベビーカー貸し出しサービスを実施しているもう1つの事例

⇒ベビカムウィークリーリサーチVOL.43-1
 「ベビーカーでのお出かけ、こんなときどうする? (その1)電車・バスでのお出かけ編」


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