妊婦健診について 妊娠初期

この記事を監修したのは…

堀口 貞夫先生

元愛育病院院長・産婦人科医師

堀口 貞夫先生

元愛育病院院長、元東京大学医学部講師。妊婦が安心して、自分が納得のいくお産をするために、のべ4万人という妊・産婦をあたたかく見守ってきた。「妊婦のことを親身になって考えてくれる」と評判が高い…

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2020.1更新

妊婦健診とは?

母子手帳を読む妊婦さんの写真

「妊婦健診」とは妊婦健康診査、つまり妊娠中の定期健診のこと。妊娠がわかってから出産するまで、定期的に産婦人科や助産院に通院して検査や保健指導を受けます。妊婦健診を受けることで、ママやおなかの赤ちゃんの病気などに早く気づき、早く対処することができます。

妊婦健診の受診回数

一般的な受診回数は、妊娠23週(妊娠6ヶ月末)までは4週間に1回、妊娠24週〜35週までは2週間に1回、妊娠36週以降は1週間に1回の合計15〜16回とされています。ちなみに外国では、スイス4回、フランス7回、オランダ12回、フィンランド・ノルウエー・アメリカでは14回くらいの健診を奨めています。

妊婦健診に必要な手続き

妊娠がわかったら、住んでいる市町村の窓口で、できるだけ早く妊娠の届出を行います。窓口では、母子健康手帳の交付とともに、妊婦健診を公費の補助で受けられる受診票や、保健師などによる相談、母親学級・両親学級の紹介、各種の情報提供などを受けることができます。

妊婦健診にかかる費用

妊婦健診は病気治療のための診察ではないため、本来は自費診療であり自己負担するものですが、公費(地方自治体と国)の補助で受けられる助成制度があります。母子手帳交付の際にもらう受診票が「補助券」となります。補助を受けられる妊婦健診の回数や金額は、自治体によって異なりますが、およそ妊娠中14回で、助成内容は受診票に書かれている項目です。受診票に書かれていない項目や検査をする場合は、自己負担となります。居住地と異なる自治体の医療機関で受診する場合は、都道府県により取り扱いが異なりますので、受診票が使えるかどうか、事前に確認しましょう。

公費負担で受けられる健診内容

東京都を例に、公費負担で受けられる健診内容を紹介します。公費で受けられる検査項目は、自治体によって異なる場合があるので、事前に確認しましょう。

初回(妊娠8週ごろ)

問診、体重測定、血圧測定、尿検査(糖、蛋白定性)、血液検査、血液型(ABO、Rh)、貧血、血糖、不規則抗体、梅毒(梅毒血清反応検査)、HIVスクリーニング、B型肝炎(HBs抗原検査)、HCV抗体、トキソプラズマ抗体、風疹(風疹抗体検査)など

2回目以降

受診勧奨時期問診、体重測定、血圧測定、尿検査、保健指導など

その他、2回目以降に選択できるもの(*下記から1項目を選択)

クラミジア抗原(妊娠初期から20週)、C型肝炎(妊娠初期から20週)、経膣超音波( 20週から26週)、血糖(28週から32週)、貧血(妊娠30週、37週)、B群溶連菌(妊娠後期)、NST(ノン・ストレス・テスト。36週から)

※:経膣超音波
超音波検査の公費負担は、自治体によって、出産予定日現在の年齢が35歳以上の人だけを対象としているところと、35歳以下でも対象としているところがあります。

※:NST(ノン・ストレス・テスト)
陣痛や高血圧症候群などのストレスがない状態で、胎児心拍陣痛図を30分前後記録し、胎児の健康状態を計測する検査。赤ちゃんの心拍を調べる検査なので、「胎児心拍数モニタリング」「モニター」ともいわれます。おなかに2種類(胎児心拍数と陣痛)のセンサーをつけて、分娩監視装置という機械で調べます。通常は妊娠後期に行いますが、妊娠高血圧症や糖尿病など母体にトラブルがある場合や、IUGR(子宮内胎児発育遅延:赤ちゃんが小さい)が考えられる場合などは、もっと早い時期から検査をします。

妊婦健診の検査内容

妊婦健診で行われる主な検査内容を紹介します。

尿検査・血圧測定

血圧の上昇、たんぱく尿や尿糖の有無により、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの妊娠合併症の予防や早期発見に役立ちます。

体重測定

妊娠中は胎児の発育、血液量の増加、脂肪の増加などで体重が増加します。体重の増え方が著しく多い場合は、妊娠高血圧症候群などが心配され、著しく少ない場合は、赤ちゃんの発育が順調でない可能性などが考えられます。毎回測定して、前回までの体重と比較します。

腹囲・子宮底長測定

腹囲は、おへその位置で、おなかの周囲をメジャーで計測します。子宮底長は、恥骨の上から子宮の上端までの長さをメジャーで計測します。子宮が妊娠週数に応じて大きくなっているかどうかを確認します。腹囲は妊婦さんの肥満度とも関係があるので、体重の計測だけで腹囲計測はしない施設もあります。

妊娠初期に実施するもの

血液型検査

ABO 式血液型とRh式血液型を調べて、赤ちゃんとの「血液型不適合」を早期発見し、対応できるように準備します。もしもの時の輸血のための検査にもなります。

不規則抗体

ABO式およびRh式血液型以外の血液型の抗体を持っているかどうかの検査です。臨床的に問題になることは少ないですが、これが陽性に出たら、詳しく検査します。主に輸血が必要になった時の準備ですが、妊婦さんに「不規則抗体」があると、赤ちゃんが黄疸になる可能性があるため、その時に備えて検査をします。

※:黄疸(おうだん)

黄疸とは、血中のビリルビンという色素が増加し、皮膚や粘膜が黄色に染まる状態をいいます。新生児にみられる黄疸を「新生児黄疸」といい、日本人の新生児のほとんどに、この症状が見られますが、特に問題はありません(生理的黄疸)。ただし、未熟児や高度の黄疸の場合には、核黄疸を発症し、脳障害の後遺症を残すこともあるため、普通の黄疸(生理的黄疸)か、核黄疸かを早期に見分けることが大事です。高度になりそうな場合は、光線療法で重症化するのを予防します。

血算

貧血予防のため、またはお産の時に出血した場合のリスクを考えて、あらかじめ貧血や血小板減少などの異常がないかを確認します。

血糖

妊娠中の糖尿病は、妊婦さんと赤ちゃんの両方に影響があります。最近は、空腹時血糖あるいは随時血糖を測定し、必要があれば糖負荷試験を行い、妊娠糖尿病と診断された場合は、早い時期から血糖コントロールを行います。

風疹ウイルス抗体

妊婦さんが妊娠初期に風疹に感染すると、赤ちゃんに影響を与えることがあるため、風疹に対する抗体の有無を調べます。抗体がない場合は、感染しないよう注意することが必要ですが、妊娠前に検査をして、予防接種を受けておくことが、より重要です。

その他の感染症検査

検査時期 実施内容
妊娠24週から35週まで 血算・血糖を1回
妊娠36週以後 血算を1回
妊娠30週頃まで HTLV−1抗体検査(PA法またはEIA法により)

B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)抗体、梅毒血清反応、HTLV-1抗体(成人T細胞白血病ウイルス)などの感染の有無を調べます。感染がある場合は、赤ちゃんへの感染を予防するための処置を行います。

超音波検査(エコー検査)

検査時期:妊娠23週までに2回、妊娠24週から35週までに1回、妊娠36週以後に1回実施
おなかの上や、膣内から超音波をあてることで、おなかの中の様子が画像で確認できます。妊娠初期での検査では、赤ちゃんの大きさから妊娠週数が分かります。その後の検査では、赤ちゃんの発育状態や胎盤の位置、羊水の量などが分かります。

B群溶血性レンサ球菌

検査時期:妊娠24週から35週までの間に1回実施
赤ちゃんが産道を通るときに感染する細菌です。膣内の粘液を綿棒で取って検査します。感染している場合は、赤ちゃんへの感染を防ぐために必要な処置を行います。

里帰り出産で妊婦健診を受診する場合は?

新緑の中でほほ笑む妊婦さんの写真

受診票は、原則的には、その受診票を発行した自治体が妊婦健診の契約をした医療機関だけで使用できるきまりになっています。里帰り出産などで、別の自治体の医療機関で受診する場合は、費用の一部を助成(負担)してもらえる場合があるので、市区町村に確認しましょう。

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