出生前診断についてひとこと

  • 2015-06-05 10:55
  • 一般公開
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『出生前診断-出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』をご紹介いただきました。

とても難しいこのテーマ。でも、自分の家族のことは、自分で決めたいですよね。私はそれを応援したいと思いました。

今の日本の出生前診断は情報が偏っていたり、医学的に見て古かったり、間違っていたり、とげのある言葉が一杯だったり・・・妊婦さんたちには必ずしも良いものではないように思います。やっぱりここは産む人に優しい国ではないなあ、と私はここでも思ってしまうのです。

日本では出生前診断がタブー視されてきた面が強いため、実際の現場に多くの問題が起きています。

たとえば、れっきとした出生前診断である超音波検査は、回数が海外に較べて非常に多いのですが(だから日本では実は誰でも出生前診断を受けているのです!)、どんな病気がわかってしまうかの説明もないのが普通です。

その一方で、欧米やアジアの先進国で妊婦健診の中で重要な役割を果たしている精密な超音波検査(日本では「胎児ドック」などと呼ばれることもあります)は、まだ実施施設がわずかしかありません。

羊水検査、新型出生前診断、母体血清マーカー検査などの染色体疾患を調べる検査については「すべきではない」と妊婦さんに言う医師も少なくないので、相談しにくいという妊婦さんによく出会います。

「知って選ぶ」という当たり前のことのために、本を役立てていただければ幸いです。

検査は受けないと決めて高齢出産をする方から「ダウン症候群のある子どもが生まれたときの育児についても知りたい」という声も聞こえてきますので、最終章ではそうしたことについても経験豊かなお母さんたちや小児科の先生に教えて頂いて書きました。

プロをひとりじめして相談できる「遺伝カウンセリング」についても、体験などしてみたりしながら迫っております。

日本では「出生前診断に賛成か、反対か!」という論争が目につき、最近は、そうしたテーマでレポートを書かせる学校も多いようです。でも私は、妊婦さんたちを見ていると本当に百人いれば百通りの思いがあるのだろうと感じます。同じ方でも一人目は受けたけれど二人目は受けない方もいるし、その逆の方もいます。とてもではないけれど白黒はっきりできる問題ではないことは明らかです。

だから、妊婦さんは、一杯迷っていいのです。実は、医師たちも長い間悩み続けているのです。でも、迷いの時間から、きっと自分の答が見えてきます。そして、それはご夫婦が親への階段を上っていくための大事な時間になると思います。
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