【第40回】両親学級

山本智美:助産師日記

両親学級を行うと、夫側の「妻のためにがんばりたいけど何をどのようにしたらよいのかわからない」というジレンマが伝わってきます。今回は、私が行っている両親学級のひとコマを夫側を中心に紹介します。

自己紹介からはじまる両親学級。

この学級で何を知りたいのかについて必ず話をしてもらいます。「陣痛がきたらどうしたらよいのか」「妻が痛がっている時にどのようにサポートしたらよいか」「産後のサポートは、何をしたらよいのか」「すべてがはじめてで教えてもらうことすべてが学びになる」など、かなり具体的な夫からほとんどイメージがついていない夫までいます。しかし、どの夫からも「妻のために何かをしてあげたい」という意気込みを感じます。

次に、「今奥様のおなかにいる胎児は、どの位の大きさでしょうか」と聞くと、「えっ?大きさ?」と戸惑っている方がほとんどです。実際、人形で大きさを伝えると「ウオー」という歓声。そして、胎児と胎盤・臍帯について説明し、そこでタバコの害について話します。嫌な顔をする方、もちろん止めていますと胸をはる方。胎児にとっても、生まれてからも、タバコはよいことはありません。それに実際の胎児の状態を説明すると、少し子宮の中のことがイメージできるようです。

今度は、夫と妻に分かれてグループディスカッションです。お産という言葉から何をイメージするのかを発表してもらいます。

「陣痛がきたら何が心配なのですか」と質問すると、妻に陣痛がきたらどのように病院に連れて行くのかを心配しているという方がかなりいます。連絡がとれなかったら、自分が仕事中だったら…。夫は、とても緻密ですね。それを妻側に聞いてみると、ほとんどの妻はそんなことはあまり心配していないのです。

話は、陣痛の時に何をするかという話題にかわりました。水を飲ませる。汗をふく。手をにぎる。マッサージをする。励ます。妻のいいなりになる。お産は病気ではないから普通に接する。

すごい! ほとんど心得ています。あとは、長い陣痛の間、妻がとても辛そうにしている姿をどのように感じ同化しないでサポートできるのか。夫も心身共に疲れすぎないかです。

夫婦で話し合う、触れ合う機会に

それから、全員で妊婦モデルの着用です。妊婦モデルを着用した夫に実際お産してもらいました。

陣痛の間、どのようなスタイルがいいのか、夫は、どのようにマッサージをするのか。お産の時のスタイルは? 赤ちゃんはどのように産まれてくるのか。今回は、横向きでお産しました。後は、胎盤の娩出です。上を向き、その間に赤ちゃんを抱っこしましょうと。これが、カンガルーケアです。そして、生まれたての赤ちゃんの能力について、説明すると、再度「ウォー」と歓声があがります。

最後は、お産後のサポート。子どもの散歩、買い物や洗い物など、夫も何かはしようと思っています。でも妻側にとっては、そんなことではなく、まず私の話をじっくり聞いてほしい。声をかけてほしい。一人になれる時間がほしいと思っていることを伝えます。最近は、産後うつや育児ストレスが多いこと、地域のサポートが充実してきたことなども説明しました。

両親学級をすると、夫側と妻側とで多少考えていることが違っていたり、伝わっていなかったりしていることが見えてきます。これを機会に夫婦で話し合う。触れ合うことを大切にしてくださいとお願いしています。

※今回は、私が行っている両親学級の一部を書きました。同じ施設でも、担当助産師でやり方が違いますし、施設によっては内容も違います。

(2007.5)

ゲスト

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