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山本智美:助産師日記
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【第12回】両親との意見の違い

山本智美:助産師日記

最近、お母さんたちから「両親(義母・義父)との意見 の違いによって混乱する」という相談をよく受けます。産 後、ご両親の手伝いを受ける方は多く、特に初産婦さんは、9割以上の方がご両親の手助け受けており、ご両親の力は 大きいものです。

安や心配の中で、自分や夫を育てた経験のある先輩が アドバイスをくれると安心しますね。しかし、場合によっ ては、それがストレスの原因になることもあるようです。そこで、今回は、ご両親との意見の相違についてお話ししま しょう。

母乳が足りない

経産婦のSさんは、1人目の時に母乳でいきたいと思っていたそうです。しかし、実家に帰り四苦八苦しているS さんを見たご両親から、「そんなに赤ちゃんが泣くのは、母乳が足りないからに違いない。ミルクを足しなさい」と注意されたそうです。Sさんは、赤ちゃんの体重も増えているし、このままでいきたいと思っていましたが、毎日毎 日言われることに負けてしまい、その後は、ほとんどミル クになってしまったそうです。だから今回は、ぜひ母乳でいきたいし、両親にもはっきり伝えると言っていました。

母乳かミルクかを決めることは、本当に難しいことです。ただ単にどっちと決めることはできず、それをとりまく環 境が絡んでくるからです。母乳とミルクの歴史をみると、昭和30年代~40年代はミルクが増え、母乳を上回った時期です。「ミルクをのんで、健康な子どもを育てましょう」というのが、その年代に育児を経験したお母さんにとっては当たり前で、泣いている赤ちゃんを見ると、「泣いているのは足りない証拠。かわいそうだから、ミルクを足して太らせましょう」ということになるのです。

しかし、今は母乳が推進されています。自分自身は、どうしたいのか。頻繁にアドバイスするご両親には、Sさんのように自分たちの考えをきちんと伝えることも大切です。

「抱っこしてもいいのですよね」

病院の廊下を歩いていると、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきました。その声に誘われて、病室に入ると、Aさんが泣いている赤ちゃんをじっと見ています。

「どうしたの?」とたずねると、「おむつを替えても、おっぱいをあげても泣きやまないのです。どうしたらいいのか…」とAさん。すかさず「抱っこしてあげて」と私が言うと「いいんですよね?抱っこしても」とAさんは言うのです。

どうしてそんなことを言うのかと聞いてみると、抱きぐせがつくから極力抱っこしないようにと、親から言われ「 本当にそれでいいのかなあと思っていた」と言うのです。抱きぐせは大丈夫だから、思いっきり抱っこしてあげてい いよと私が言うと、安心したかのように赤ちゃんをやさし く抱っこしました。

Aさんは「いくら両親に言っても、抱きぐせのことはわかってくれない」と、結局、私からご両親に説明しました。

「抱きぐせがつく」とご年配の方はよく言います。昔は、子どもの数が多く、まわりは忙しく働いていました。そのため、いちいち抱っこしてられなかったせいなのかもしれません。赤ちゃんは、抱っこされている時がいちばん安心し、幸せなのです。その安心感が、とても情緒によいと言われています。"HUG=抱きしめること"という言葉があります。みなさんも、さびしいとき、不安なとき、うれしいときなど抱きしめられると安心しますよね。赤ちゃんに とって、直接皮膚に触れることが大切なのです。そういう 意味からすれば、昔からされてきた"*添い寝"は、よい方法ですね。

アドバイスを聞くことは、大切なことです。しかし、自分の考えと合わないこともあります。他人から言われると、 素直に聞けたり、聞き流すことができても、身内から言われることによって、素直になれなかったり、自分の考えが言えなかったりすることもあります。

ご両親は、自分の経験を通してよかれと思ってアドバイスをします。それが、とても役立つこともありますが、かえってトラブルの原因にもなるようです。今後、子育てをしていく上で、いろいろな選択肢が増えてきます。そのためにも、まず自分たちはどうしたいのかを夫婦で話し合うこと、それをご両親に伝えることが、トラブルを起こさない方法だと言えるでしょう。

(2000.6)

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