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堀口貞夫:幸せなお産
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子宮口が硬い? 柔らかい?

堀口貞夫:幸せなお産

妊娠中の内診で「子宮口が柔らかいので注意してください」とか、「子宮口が硬いからまだ生まれそうもありません」などと言われた経験を、たいていの妊婦さんは持っていることでしょう。お産の進み具合を左右する要因に「子宮口の硬さ」があります。

子宮口は、妊娠中はしっかりと閉まっていてくれないと困りますし、また分娩が始まったら、今度は順調に開いてくれないと困ります。

コラーゲン構造の変化が関係

妊娠中はしっかりと閉まっていた子宮の口を開かせるのは、陣痛(規則的な子宮の収縮)です。同時に、子宮口に「開きやすいような変化」が起こる必要があります。

ここで子宮の出口の構造についてちょっと説明しておきましょう。子宮は、子宮体部(胎児の入っている部分)と子宮頚部といわれる子宮の出口との2つの部分からできています。子宮頚部は3~5センチの厚さがあり、妊娠中にどんどん成長する胎児をしっかりと支えています。

子宮頚部は筋肉繊維と膠原繊維(コラーゲン線維)と弾性繊維でできていますが、大部分は膠原繊維でこれによって胎児の重みのかかる子宮口をしっかり支えているのです。

分娩予定日近くなったり、陣痛が始まったりすると、このコラーゲンの構造が変化して、鼻の頭くらいの硬さだった子宮頚部(子宮口)がマシュマロ様の柔らかさに変化します。このコラーゲンの構造変化を引き起こす機構はまだよく解明されていません。この変化が適切な時期に起こらないと、「突然切迫早産で入院」「予定日が過ぎたのに子宮口が硬いので入院」とか「破水してしまったのに子宮口が硬くて陣痛促進剤を使ったのに開いてこない」などとなります。

「柔らかい」vs「硬い」

子宮口が柔らかすぎる場合のお産はどうでしょうか。妊娠37週を過ぎていればいつ生まれてもよいので、陣痛が始まるのを気楽に待っていましょう。妊娠34~36週なら、陣痛が始まってしまわぬよう静かにしていたり、子宮の収縮が強くなってくるようならちょっと横になったりします。妊娠33週までだと胎児の体重はやっと2999グラムになるかならないかで、機能的にも未熟なことが心配されるため、入院安静になるかもしれません。

一方硬すぎる場合はというと、少なくとも分娩予定日までは、破水や重い合併症その他、分娩を終了させなければならない状態がない限り心配はありません。分娩予定日を過ぎて胎盤機能が低下するなどのために、胎児を分娩させた方がよいと判断されるときに、「子宮口が硬すぎる」と、陣痛を起こすのが難しいか、あるいは陣痛を起こすことができても、分娩進行に時間がかかってしまうなどの不具合を生じます。しかし硬さの判断にも医師の個人差がありますし、えっと思うくらい簡単に分娩が進行することもあります。

「硬い」「柔らかい」判断の妙

「硬い」とか「柔らかい」という医師からの説明がわかりにくいとしたら、いろいろな要因を併せて考えているからです。まず「子宮口の硬さ」を客観的に計測する手段がないため、診察者は指でさわった感じで経験的に判断しています。また、硬さが同じでも、子宮頚部の厚さによって対処法を変えることがあります。さらに子宮収縮の状態(頻度と強さ)も対処法を考える上で大切な要素になります。そして、胎児の頭が下がって来ているかや、妊娠週数も考慮に入れなくてはなりません。そのほか、初産なのか、経産婦さんなら前のお産はどんな経過だったか、仕事を持っているのか、などを考慮して医療者は最終的な方針を決めています。

子宮口の硬さを調整できる?

柔らかい子宮口を硬くすることはまずできないと言った方がよいでしょう。一方柔らかくすることはというと、多くの研究者がいろいろな方法を試みましたが、「80%以上有効」という方法はないようです。

予定日が近くなると多くの妊婦さんが自覚している子宮の収縮(お腹の張り)によって、子宮頚部の柔らかくなるメカニズムは動き始めると思われるため、「お腹がはりやすい」ような日常生活(からだをできるだけ動かす、乳頭のマッサージ)を送ることは役に立ちそうですが、確かに効いたという証拠はないのです。こんな不思議を抱えながら、医師と妊婦はお産に臨んでいるのです。

(2003.08)

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